暴君崩壊 1
下克上。日本史において下位の者が上位者を政治的・軍事的に打倒し上下関係をひっくり返すこと。
一番有名なのは、明智光秀が織田信長に対して下克上をした本能寺の変だろう。
諦めなければ必ず打開できる。下克上は悪いことじゃないし、チャンスをものにできればとてつもない見返りを得られることなのだ。
だから、そう...
まさに今の状況は非常に好機だ。暴君に一矢報い現状を打破できるチャンスが舞い降りてきたのだ。
これを逃せば僕は一生飯奴隷だ。そんなのは絶対に嫌だ!
このチャンスに僕の全てを賭け、水無梅子に僕は日々の鬱憤を吐き出した。
「言ってますよね?バランス考えて作ってるんだから残さないでくださいって!なのにどうしていつもいつも野菜は残すんですか!小学生か!」
「だ、だって美味しくないんだもん仕方ないじゃない!美味しく出来ない卯月が悪いのよ!」
あれ?なんか思ってたのと違うような...
もっとこうやられたらやり返すみたいな感じで攻めようと思ってたんだけどなぁ...
内容がまるで些細なことで喧嘩する親子なんだよなぁ...
「それが作ってもらっている人に言う言葉ですか!?あなた僕より年上なのにそんな言葉遣いしかできないんですか?」
「はぁ!?あんた調子に乗るのもいい加減にしなさいよ!?」
「あーそうですか!そんなこと言うならもういいです、金輪際お弁当もご飯も作りませんから!」
「はぁ!?それとこれとは違うでしょ!ちゃんと明日も作りなさいよ!」
「ふん、先輩がちゃんと反省して謝ってくれるまで作りません」
「ぐぬぬ...」
内容はあれだけど、先輩を追い詰めてるのは確かなようだ。
いいぞ、この調子で攻めれば先輩だって少しは暴君っぷりを抑えてくれるかもしれないぞ!
ん?何か違うような気がするけど、まぁいいか。
「ふぅん?じゃあ言いふらしてもいいんだぁ?」
「どうぞご勝手に!そしたらこの関係も終わりですね、今までありがとうございました。出口はあちらです」
「...」
ふふふ、ついに反論しなくなった。勝った!あの水無梅子に勝ったぞ!
「...ぐすっ」
「え?」
「う...うぇぇーーーーん」
僕の目の前でわんわん泣く先輩の目には大粒の涙が、まるでダムが決壊したが如く溢れ出ている。
あ...あれぇ?何で泣いてるのぉ?この展開は全然予想してなかったぞぉ?