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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
二年目

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98/600

信用


 修学旅行で、魔術師の男は()()()監視を外していた。命令は下されていなかったものの以前と同様に視ていた、4人の監視対象全てから。

 いくら彼らが監視対象であっても学生であり、あれは修学がための旅行だが友人達と楽しく過ごすだろう時間でもある。


「(……等の理由では無く。(ただ)、『他の領地へ侵略しない為』に渋々ながら目を外しただけですが)」


 魔術師の男は面倒そうに小さく息を吐く。


「(普段より(わたくし)を『貴族崩れ』だと揶揄(ゆや)する癖に、干渉に引っ掛かると『決まりを侵害した』等と喚きよる)」


気位の高い者共との衝突ほど面倒なものはない。

 面白くもない面倒事は避けるに限る。


 そして監視を外していても、監視対象達は妙な事などしないだろうと考えていたからだ。

 転生者は行動を起こせる精神状態ではない。

 転移者は何かを画策しているものの、起こす場所はあの場所(学園の外)ではない。

 覚醒者は今のところ、行動を起こす気配がない。寧ろ、行動を()()()()()()()

 要注意人物である薬術の魔女は、能力は危険であるものの性格は善性であるため、自ら何かを起こすことはしない。

 彼女が何か行動を起こす時は先に攻撃された時で、やり返すまでにしばらくの猶予もある。


 とにかく、魔術師の男は彼らの性格や状態を考慮して監視の目を外した。

 その結果、彼らは魔術師の男の期待通りに何もせず、普通の学生として修学旅行を終えた。


×


「……」


 魔術師の男は薬術の魔女を見送った時の座った状態で、ゆっくりと目を閉じる。


「(……先程の、あの顔は何だ)」


 なぜ、()()()()()()()()()()()()のために、あんなに苦しそうな顔ができるのだ。

 わけが分からなかった。


「(()れに、私を『すごい』『頑張っている』等と、)」


 なぜ、認めるような言葉を投げかける。

 自身に取り入るためかと考えてみるものの、取り入っても魔術師の男には貴族のコネも何も無いのだから何の旨みもない。


「(……恐らく、腹芸ができるような娘でもない)」


 即興の演技ができるほど、彼女は経験も度量もない、はず。それに薬術の魔女は返答から逃げるのは上手いが、壊滅的なほどに嘘が下手だ。

 嘘が下手な振りでもしているのかと疑いはしたものの、どうやら本当に下手なだけらしい。

 先程の会話で確信した。


「成らば……唯の、善意……でしょうね」


 薬術の魔女は要するに『良い子』だ。困っている人がいれば手を差し伸べ、悪意を許し、立ち向かう際も決定的な(とど)めを刺さない。


「(あれは、共感による憐れみや同情。理解は()れども深くは踏み込まぬ(たぐ)いのもの)」


 どうせ、途中で投げ出される。自身よりも優秀で、面倒でない『』(だれか)に鞍替えされる。

 事実、自身で薬術の魔女へ、契約初日にそうするように促した。


「……信じられるものか」


 と、呟いたところで、信じようがそうでなかろうが自身が監視役で契約上の婚約者であることは変わらない。


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