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誰かの内情:其の壱

「…………」


 魔術師の男の、後ろ姿を睨み付ける。そして、その男に手を引かれる、戸惑った表情の女学生に視線を向けた。


「(アイツは……)」


 初めは変なヤツだと思っていた。妙に俺に突っかかってくるし。だが、それらはきっと彼女なりの心配だったに違いない。態度の忠告とか。

 彼女に出会ったのは運命だと思った。さっき、あの腕をつかんだ時に、そう感じた。

 触れた温かみが、もっと触れていたいと思えるようなその心地が、間違いなくそうだと思わざる得ない。


 彼女に触れた手を握り締める。

 あの女学生はなぜか、やけに背の高い視察の魔術師に付きまとわれているようだった。確かに、顔も整っている……というより、整い過ぎて作り物のような顔をしているし、それでいて明るく素直な様子だからな。

 よく一緒にいる友人達との会話によると、少しおっちょこちょいで天然な部類に入るらしい。

 見た目の良さや性格の可愛らしさも相まって、男達もあまり放っておいてくれなさそうだ。しっかりと好意を示しているヤツや遠巻きに見ているヤツも割といるようだし。


 そして、あの魔術師の男は危険な部類だ。妖艶、というか怪しい雰囲気の、女性のような顔の男。

 初めて見た時からあの男は危険だと、そう直感が告げていた。

 だから、思ったのだ。あのまま、彼女のそばに置いているとやがて彼女が危険な目に遭うだろうと。


「(彼女は、()()守らなければならない)」


 他にもならない、『勇者』である自分が。


 今まで『勇者』として生まれ、前世の記憶を頼りに生きてきた。これからも、そうするつもりだ。


「(……それの中に、アイツが加わるだけだ)」


 二人の後ろ姿は、いつのまにか見えなくなっていた。


×


「(どうすれば、アイツをあの男から守れるだろうか)」


 そう考えながら、街の中を歩いた。今日歩いた街の中には剣やナイフなどを販売している店の姿はなかったものの、きっと何処か少し離れた場所で売られているはずだ。


 俺が通っている魔術アカデミーには、門限が存在している。夕方の6時だ。時間の感覚は前の世界とほとんど同じで、俺は特に不自由は感じていない。

 なぜ夕方の6時までに帰らないといけないのかというと、それは簡単に、魔獣が出るからだ。逆を返せば、魔獣を倒せるならば夕方6時を過ぎても外を出歩いてもいいわけだが……。


「(門限を破るのは、あんまり良くないよな)」


 うっすらと、赤く色付き始めた空を見上げる。前世の世界よりも、紫っぽい色の夕焼けだ。


 記憶の中の世界は、この世界とは違い魔法はなかったけれど、魔法に似た科学力があり、それはこの世界のものを凌駕していた……ような気がする。この世界にも家電製品のようなものはあるが。


「(テレビのような、画面に映像を映し出す技術はあるんだよな)」


 店じまいをするのか、映像を映し出していた看板の色が消えた。


 逆に、何時から外に出ても良いことになっているのかというと、法律では『太陽が出始めた頃』となっているらしいが、魔術アカデミーでは朝5時からだ。


「……!」


 そこで、ふと彼女を守る方法を思い付いた。


 身体を鍛えて、自分自身が更に強くなれば良いのだと。

 とりあえず、体力をつける為に早朝の走り込みを始めることにした。


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