運命伐採18
次男は『霊の国』で捕縛されていたのだが次女の結婚式かつ呪猫当主や死犬当主直々にお願いがあったので、特別に釈放してもらったそうだ。伴侶と共に結婚式に出席した。
「このあとどうするの」
式が終わって、魔女達は呪猫の拠点に戻っている。そこで家族達は着替えを済ませたり休憩を取ったりしている。
「結婚式が終わったらまた『霊の国』に戻りますよ。早く手続きを終えたいですからね」
次男はそう答えた。
「手続き?」
「釈放の、です。まあ、前科は付かないらしいんですけど」
「前科、つかないの?」
「反発を恐れてとりあえず匿ってくれている、という感じが近いです」
「へー」
「どうやら、僕が治世していた時代がかなり平穏だったらしくて。まあ悪い事の取り締まりとかはきちんとやりましたからね。金の流れや行政にも、少し手を加えておきました」
「へ、へー」
「もう一つ、『偽王国の者に脅されていた』と言うところがうまく作用しました」
「脅されてた?」
「『自身の妻を偽王国の者に洗脳されており、仕方なく手を貸した』と言うことになっています。……まあ、ほとんどその通りなんですが」
「そうだったね」
次男は『霊の国』で色々やったが、それの差し引きで色々と免除されたらしい。
「で、伴侶の調子はどう?」
魔女は次男の伴侶の事を聞く。
「今ではすっかり元通りです。……本当、よかったです」
そう、心底安堵した様子で次男は言った。
「発展が終わったら釈放してもらえるみたいです」
「終わったらどうするの? もう軍に戻るつもりはないんでしょ」
「ええ。伴侶と冒険者でもやってみようかと思っています」
「冒険者かぁー」
もとより、次男は魔力が固まりやすい体質でそれをどうにかするために軍部へ入ったところがある。なので、より魔力を使う機会が多そうな冒険者の方へ転向するのは当然の話かと魔女は思った。伴侶もそれについていくらしい。
樹木が発生してから現れた『冒険者』と言う職業は、樹木を探検する人々の事を指していた。それが魔獣を退治しつつ材料を採取する人々に変わり、魔獣の蔓延るこの世界では欠かせない存在へとなりつつある。
魔獣殲滅部隊の隊長であった彼なら、同じく副隊長であった伴侶と一緒ならば魔獣を倒すのは容易であると想像がつく。それに彼は(魔女や術師、『おばあちゃん』『黒い人』のお陰で)確かな審美眼があるので、良質な材料も回収してくれるだろう。
軍部よりも彼の適職かもしれない、と魔女は思ったのだった。




