運命伐採16
「じゃ、用事済んだし落ち着いたから」
と、色々な事情聴衆が終わるや否や、長女はとりと共に旅立っていった。
「あ、次女の結婚式にはいくつもりあるから、日にちが決まったら招待状ちょうだい」
そう言い、とりの羽を一枚、魔女に手渡す。
「この羽があれば、私達の座標は分かるから」
×
あっさりといなくなってしまった長女のことを思い、魔女がため息を吐いていると。
「ところで、総司令からの命令はどうした」
そう、同僚の男が声をかけた。ここは魔女の執務室なので、また仕事をサボってきたのだろうか。仕事はきっちりして欲しい、と思うが魔女もサボりがちなのでとやかくは言えない。
「元に戻るお薬のこと?」
「材料に樹木が必要だったんだろ? もう全部なくなっちまっただろ」
「なんかね、夢見草とこの杖だけでもなんとかなりそう」
「は?」
「あとね、最後に残った『樹木』が伴侶のやつだったっぽくて。いつでも枝と葉っぱの回収できるようになったよ」
「は??」
困惑する同僚の男をよそに、魔女は元の世界に帰る前のことを思い出す。
×
樹木がまだ残ってるけど、どうなるんだろ。と魔女が残った樹木を見ていたその時。
「あの樹木の中に、人はもう居りませぬ。星海の神の奇跡の力を失うと共に彼が力を解除し、解放致しました」
と、その3の方を見、術師は笑みを張り付けたままで述べた。
「最後の樹木、王冠の大樹の守護の役を司るのは此の私」
「……最後に残ったのは、私の樹木でしたねぇ」と、彼が笑っていたのを魔女は見ていたのだ。
×
「……ってことは、樹木証拠に詰める事が出来んじゃね?」
は、とした表情で同僚の男が言うも
「んー、なんというかそれ難しいんじゃないかって薄紫のねこちゃ……じゃなくて猫のところの当主の人が言ってた」
魔女は首を振る。
「なんでだ」
「『樹木以外に証拠が無い』んだって」
「あ?」
「なんでそこで怒るの」
「一個でも証拠ありゃあ 何とかできんだろ」
「捏造でもするの? ダメだよ」
「チッ」
証拠の捏造は『おばあちゃん』が許さないので、術師を罪に問うのはかなり難しそうだ。
「もちろん、いっぱい集められた樹木の枝や葉っぱも活用していくつもりだよ」
と魔女が告げた。
作った薬は総合組合を通して、全世界へ渡っていくことになっている。
これで、みんなが元の姿に戻ったらいいな、と魔女は思うのだが。
意図的に薬を使わず亜人化したままの人間が一定数おりそれに困惑したり、薬と共に魔女の名が世界中に広まったりする。
最後に残った巨大樹木は『天の国』の土壌に移り、幻の国にある『聖なる木』という感じになっていた。所持者は術師であることはちゃんと国際法で取り決めがされ、樹木の資源は魔女のみが使えることになった。




