運命伐採14
「ところで、その子。誰がお世話するの? おばーちゃんと『黒い人』?」
少女を見、魔女が疑問の声を上げると。
「よくぞ聞いてくれました。がんばってください」
「がんばって『命の息吹』『呪う猫』」
『おばあちゃん』と『黒い人』が、魔女と術師を見て微笑んだ。
「え?」
「は?」
戸惑う二人をそのままに、『おばあちゃん』と『黒い人』は少女を引き寄せる。
「あなた方なら『人間の営み』をめいいっぱい教えることができるでしょう?」
「それにわたし達とも簡単に連絡が取れるし、各家の当主とも、王代理ともお話ができるでしょう?」
「えー?」
「……」
魔女が術師を見ると、頭が痛そうな顔をしていた。「決定事項だから」と『黒い人』は嬉しそうな雰囲気を出している。
「これからの事でわたくし達も忙しくなりますし、あなた方の事なら問題ないでしょう? 子育て経験もありますし」
「わたし達の扱いも心得てるし」
どうやら『おばあちゃん』も『黒い人』も意見を曲げる気はないらしい。
「そうなるのですか」と低く唸る術師に「そうなっちゃうんだなー」と『黒い人』は頷く。
「わたし、いやよ! こんなアホそうな奴と悪意しかない奴にお世話されるなんて!」
「調子に乗るなよ童」
「こら! ねこちゃん!」
魔女と術師のもとに押し出された少女は叫んだ。その内容が気に入らなかったらしく術師が低く唸り、魔女が窘める。
「貴女、阿保呼ばわりされて居るのですよ?」
「だってよく言われるし……ってか、きみも『愚か』っていうじゃん」
「……其れはそう言う意味では有りませぬ」
「知ってる。まあ、口の悪い次女ちゃんみたいなものだと思えばいいよ」
よしよし、と魔女が少女の頭を撫でると「気安く触らないで!」と手を叩かれてしまった。
「まま、ぱぱ。次女より、手間かかるよ絶対」
そっと近付いた曙光卿が、少女を見、次に魔女を見る。
「なんでそういうの?」
「次男がいないから」
「あー……」
「あと、ぱぱが協力的じゃない」
「うわー……ってか手伝ってよ、ねこちゃん」
ジトッと術師を見上げるが、彼は憮然とした表情のままだ。
「嫌で御座いまする。何故儂が血の繋がりの無い童を育てねばならぬのか」
「次男は養子だったでしょうが」
「敬意と才能が有りましたからね」
「うーん、素直じゃない」
ともかく決まってしまったことはしょうがないので、魔女(と術師)は星海の神だった少女を預かることになったのだった。
×
一応話がついたので、元の世界に帰ることになった。
「『金の国』へ、直接送って差し上げます。皆さんの故郷ですよね」
そう『おばあちゃん』が告げた直後、周囲が光る。
目を開いたら時には『金の国』に立っていたのだった。そして、そこには同僚の男と隊商長、呪猫当主と嫂が待っている。
「うわ、中々にまた面倒事持ってきやがったなお前」
出てきた人達を見て、顔をしかめる同僚の男。
「流石ですわ。座標も合っております」
と、呪猫当主にくっつく嫂。どうやら魔女達が出てくる位置を呪猫当主が占いで出していたらしい。
嫂がすっごい呪猫当主にくっついているが、長い間呪猫当主が肉体と魂に別れていたことを考えると無理もないと思う魔女。
「で、諸々の問題は解決したんだよな?」
問う同僚の男。
「なんかね、『おばあちゃん』や『黒い人』が言うには世界が丸くなるんだって」
「は?」
それから、魔女の発言の通りに世界の端が消えたのだった。
↓手間がかかる次女が良い子になるお話↓
『"まれーふぃか"になる少女』(ヤイロ)
次女はこんな感じの子です。
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