運命伐採13
「えい!」「ほい!」
『おばあちゃん』と『黒い人』が簡単に手を振るった直後。
「きゃあっ!」
星海の神が縮み、子供の姿になる。ころりと転がり、地面に落ちた。
「あなた達は、一度人間の営みを学びなさい」
「わたし達みたいにね」
落ちた『星海の神』だったものに、『おばあちゃん』と『黒い人』は声をかける。
「そんな、」
口を戦慄かせる『星海の神』だったものは、少女の姿をしていた。熱を思わせる赤い髪に、癒しを思わせる緑の目を持っている。
「こんな姿になっちゃったら、奇跡がなくなっちゃうじゃない!」
癇癪を起こすも、何も起こらない。それでますます、少女は心細くなったのか涙をこぼし泣き始める。
「わたし、世界の創造と破壊を止めたかっただけなのに!」
「いっつも白と黒の神が創って壊して喧嘩ばかりして、それが嫌だった!」
「動かなければ、世界が滅びることはないと思ったの!」
「代わりに創造を捨てたけど」
「神々がやらなくても、人が世界を動かすと信じていたから」
「球体は不安定だから動くしかないけど、平面になれば安定するから動かないで済むでしょ」
「守護しやすかったのよ!」
「わたし、なにもわるいことしてないじゃない!」
「ひどいわ! みんなして、わたしをいじめるなんて」
とうとう、子供のように大声で泣き出す。動けるようになった若者達は、どうしたら良いのか分からずおろおろとしていた。
「そうですね。あなた自身は、何も悪いことはしていないですね」
「そうだねー。ちょーっと世界の形を強引に変えちゃっただけだもんねー。その上、自身の一部が暴走して人間を唆して世界を壊しかけたくらい」「こら」
『おばあちゃん』と『黒い人』の言葉に
「でも、わたしのせいじゃないわ!」
そう、少女は頬を膨らませた。
「……あなたにとって、『人間の営みを知ること』は、罰になるのですか?」
「え」
『おばあちゃん』の言葉に、少女は動きを止めた。
「あなたが大切に思っていた人間達と、共に生活できるのですよ。それが罰だというのですか?」
「……うう、」
「あなたの知っている人間と、現在の人間は様変わりしています。その違いを知るのも、良い機会だとわたくし達は考えています」
「ふ、う゛ーっ!」
『おばあちゃん』の言葉に言い返せず、少女は悔し気に呻き声を上げる。
泣きっ面に蜂、泣く少女にド正論パンチであった。『おばあちゃん』はそういうところあるよね、と魔女は内心同情していた。やらかしたことには同情していないけれど。




