運命伐採11
『あなた達、ただの人間のくせに生意気なのよ』
『わたしの奇跡の力が無ければ吹けば飛ぶようなちっぽけな存在のくせに』
『この世界を”こう”したのはわたし。星海の神よ』
『地に地母神を敷き、天に天罰神を置いたのはわたし。わたしがいなければ、あなた達なんて、この空間に放り出されておしまいになっちゃうんだから!』
『あなた達の言う”天地の神”だって、わたしの作り出した偽りの神。わたしがいなければ存在なんてできなかったのよ!』
『その証拠に、地の神の一部だった”熱”も、天の神の一部だった”癒し”も。わたしの中へ帰っていった。疑いようもないでしょ?』
『生意気なあなた達なんて、こうしちゃえばいいのよ!』
そう、星海の神は子供の様に喚いた。
途端に、若者達の動きが止まる。「あ、あれ。動けない!」「魔術も使えないわ!」「祈祷も、使えません」若者達は戸惑っている様子だ。
『うふふ! 虚数世界まで来たのは人間にしては頑張ったでしょうけれど、無駄だったわね! 残念!』
はしゃぐ子供のように、星海の神は喜色ばんだ声を上げた。どうやら斜陽卿や曙光卿、その1も動けないらしい。
「え、なんかやったの?」
「……扨。数名には効いて居るようですが」
だが。魔女と術師は平然とした様子でそこに居た。
「僕にも、効いてないみたいだよー」
その3が呑気に(と言うかどこか煽るように)声を上げる。
『は?』
低く、星海の神は声を零す。それは、どこか絶望に似た声だった。
『これは、「癒し」が洗礼名を与えた相手を縛る奇跡なのに!?』
どうやら星海の神の言葉が効かないことがかなり堪えているようだ、と魔女は察する。
「わたし、きみから洗礼受けてないし」
『……え?』
「わたしに名前を付けてくれたのは、おばあちゃん。あとは、『自分で』見つけた。……だから、あなたの力なんて受けないよ」
『そ、そこの男は……?』
「私、抑々洗礼等受けておりませんし」
「僕は『黒い人』から名前を付けてもらったよ」
『そ、そんな……!』
星海の神が動揺し油断しているところに、術師が一瞬で巨大な召喚陣を自身を中心に周囲へ発生させる。それには術師の魔力と、星海の神の魔力が使われていた。そこで、魔女は先程術師が唱えた文言の意味を知る。彼は星海の神の魔力を吸い上げ、自身の力として上乗せしているのだと。
だが、どうやら星海の神は気付いていない様子だ。
そして、術師は何やら文言を唱え始める。
「『我は宣言する。父なる白き天の神、母なる黒き地の神を降ろす者也と』」




