運命伐採8
そこには、白く輝くものと黒く澱んだものが在った。
『わたしは「熱」と呼ばれるもの』
『わたくしは「癒し」と呼ばれるもの』
「(……なんか丁寧に名乗ってくれた)」そう魔女は感心する。周囲は凄まじい魔力の圧力に、怯んでいる様だった。(術師と斜陽卿、曙光卿、猫は不動だった)
「……僕を、導いた声だ」
『癒し』を見、黒髪の若者は声を上げる。
どうやら、黒髪の若者はずっと以前から『癒し』と繋がりがあったようだった。だが、『熱』の事は知らないらしい。
「『熱』……つまり、お前が『精霊の偽王国』を導いてきた神か……!」
『暁の君』も言葉を零す。
『あら、会いたかったわ。癒し』
『同じ気持ちでした。熱』
「……これって、どういうこと?」
困惑する黒髪の若者に『熱』と『癒し』は声を揃えて告げた。
『「『約束』のなくなった世界」も「『世界の端』をなくすこと」も同じ、世界を作り変えるということ』
そして、『熱』と『癒し』は混ざり始める。
『「精霊の偽王国」も「樹木の破壊者」も、同じ目標に向かって進んでいたというわけ』
白と黒は混ざって、灰色に。
『だから、最後に辿り着くのはどちらでもよかった』
輝きと澱みは、星屑のような煌めきに。
『これで、不完全になってしまった世界を正しく戻すことができる』
うねる髪は、海のように深い色。
『わたしが、本物の「神」として在れる世界になる』
樹木から供給される魔力を吸い上げ、さらに成長していく。
『天地の神など生ぬるい奴らを排除して、わたしだけの正しい世界を創れる』
開いた双眸は、魔獣のように赤かった。
『世界のあり様を剥がして、やり直すの』




