運命伐採4
しばらく『虚数世界』を進んでいると、突如巨大な建物が現れた。
「……此方が、『暁の君』が御座す拠点で御座います」
驚く魔女や若者達にへ静かに術師は告げる。
拠点にはあらゆる魔術師達の魔力の残滓があった。それに気づき、注意深く隅々まで周囲を見る斜陽卿と猫。
「無い、わね」「……そのようですね」
斜陽卿と猫は、感心している様子だ。
「何探してるの」
「なんでもないわ。本当、抜かりないわねぇ」
「つまり、初めからそのつもりだった、と?」
問う魔女に斜陽卿はゆるゆると首を振り、肩の猫が術師に問うた。
「ふふ。勝ち目の無い戦等、仕掛ける筈が無いでしょう」
静かに、彼は目を細める。
「悪い人ねぇ」
「……約束はしていないのですか?」
斜陽卿は困ったように笑い、猫が術師に声を掛けた。
「はい。書類上の契約は宮廷の方に在りますよ、嘘偽り無く」
「そう。なら、後で確認しなきゃよねぇ」
肯定する術師に、斜陽卿は猫に話しかける。
ところ変わって周囲を見回し、感心する若者達。
「すっごいお城」
「あんまりな言い方だけれど、そんな感じね」
「なんと言うか、言及しにくい趣味です」
気配に気を付けつつ、若者達はあまり見ない建物に興味を奪われていた。
「ゴシック調に逆十字かぁ……まあかっこいいよね」
うんうん、と黒髪の若者が頷く。
「……魔王の城って感じだな」
「君の知ってる知識では、そう言う感じなの?」
けっ、と吐き捨てるその1に、その3が興味深そうに問うた。
「そうと決まっているわけじゃねぇよ。なんというか……厨二病、とも言える感じだが」
「厨二病って?」
「格好付けのことだよ」
「ふーん。君が疾患してるやつ?」
「してねぇよ」
そう、その1とその3が雑に会話をしていると。
「してるでしょ」
そう、黒髪の若者がその1に言った。
「お前っ! 後で覚えとけよ。っていうか俺がそうならお前も疾患してるだろ」
「否定はしなくもない。だって、僕オカルトマニアだったし」
「マジかよ……俺はゲームとネットぐらいの知識しかねぇよ」
その会話を、他の若者達とその3は不思議そうに見る。
「ねぇ、ねこちゃん。他の人達ってもういないの?」
「えぇ、恐らくは。気配は有りませぬ」
「すっごい迂闊っていうか、なんというか馬鹿じゃないの。敵を迎え撃つ感じじゃない。もう、なんというか完全に油断してる。油断しきっててゆるゆるだよ」
「不敬ですよ。未だ、彼の方は王弟であらせられる」
「ふーん」
彼のその言葉に、じゃあ王弟じゃなかったら罵倒してたのかなと過った。




