運命伐採2
そのまま、術師に『虚数世界』を案内されていると
「よかった、タイミング合ってた」
突如空間が開き、その3とその1が現れた。
驚く若者達に
「言ったでしょ、月の先で合流するって」
とその3は笑った。
「俺の心眼と聖剣あてにすんじゃねーよ」
「結果的に行けたんだからいいじゃん」
言い合いをしながらも、二人は虚数世界へ降り立った。
「どうやってきたんですか」
黒髪の若者が問うと
「簡単なことだよ」
「俺の心眼で空間の歪みを見つけて、聖剣で空間を切った」
その3とその1が答える。
「そんなことできるんですか」
「一度、やったことがあるからな」
驚く黒髪の若者に、その1はふん、と鼻を鳴らした。
「あら、『勇者』様は空間が切れちゃうのね」
驚く斜陽卿、ただ一瞥しただけの曙光卿。猫はおとなしく肩の上にいる。
「星海卿の彼と相談する必要があるかしらね。……どこに行ったのかしら」
斜陽卿は呟き、周囲を見回した。
「あ。樹木の実、二つ集めたよ」
そう、魔女はその3に話しかける。
「そうなんだね、ちょっと触るよ」
「うん」
魔女が差し出した杖にその3が触れると、一瞬光る。
「記憶戻った?」
「うん。……君と出会った頃くらい、かな。まあ封印されていた頃の記憶も戻ってるから、大丈夫そう」
「ふぅん?」
その3の欠けた記憶はあと少しらしい。
「……良い方々と合流出来ましたね」
そう、術師はわざとらしく呟く。すると、ようやく術師の存在の気付いたようで、「お前は……っ!」と、その1が武器に手を伸ばした。
「おっと。私は案内役で御座います。聖剣を向けるのは今ではなく、後にして下さいませぬか」
「……チッ」
どうやら真面目な命乞いっぽいのでやめたその1。
「……っていうか、引きずってるそれ、なんだよ」
周囲を見回し、人数を確認した後にその1は最後尾の簀巻きの集団に視線を向けた。
「捕縛せし『叛逆者』共ですが」
さらりと術師は答える。
「……嘘じゃあねぇんだな?」
「へぇ! 思い切ったことやるね」
顔をしかめるその1、面白そうだとその3は破顔した。
「どうして偽王国の連中が簀巻きになってるかは知らねぇが」
「っていうか、結構頑丈に縛ってるっぽいね。魔術詠唱も塞いでる感じかー。これ、無理矢理にでも魔術で破壊しようとしたら身体が破裂しちゃうやつだね」
簀巻きの集団をじろじろと観察するその1とその3。その3の発した言葉に、それらは動きを止めた。どうやら何かしようとしていたらしい。
鬱血しないといいけどな、と魔女は思いつつそれを解くつもりはなかった。




