知恵伐採15
森の中の探索を行う。その間に、黒髪の若者は樹木の考察を述べた。
「巨大樹木ってさ、やっぱりセフィロトが元になってると思うんだよね」
そう、黒髪の若者は言う。
「王冠、知恵、理解、慈悲、峻厳、壮麗、勝利、栄光、基礎、王国……10の『実』を持つ樹なんだ」
だが、魔女は黒髪の若者の意見の相違点を述べた。
「樹木は11本あったけど。『金の国』にあった、最初の樹木だよ。桃色の葉っぱに、ガラスの枝の木」
「それは、知識かも、しれない。桃色とか硝子とかは、聞いたことない要素だけれど。……でも、自然界に存在しない色の桃色と、液体のまま固まっている硝子なら、そういう要素も持っていると判断されたのかもしれないね」
黒髪の若者はそう答える。
「そのセフィロトってなに?」
魔女が問うと、
「生命の木って言われていて、旧約聖書の創世記にエデンの園の中央に植えられた木のことだよ」
黒髪の若者は丁寧に答える。
「えでんとかよくわかんない……」
「ともかく、その木の実を食べると永遠の命を得られるらしいんだ」
「ふーん。エリクサーみたいなやつなんだ」
「エリクサーはあるの?」
「そういうお薬のレシピはあったけど、おばあちゃんが『ダメ』っていって禁書になってるはず。宮廷の錬金術師にそのレシピ持ってる人いたけど、重要な部分は読めないようになってるって言ってた」
「へぇー」
「とりあえず、巨大樹木はそのセフィロトってやつをもとにして作られてるって考えたらいいのかな」
「そうだと思う」
話によると、セフィロトは黒髪の若者の記憶にある『前世』の聖書の内容に則したものらしい。「聖職者だったんですか?」と問う聖職者の若者に、「違うんだ。僕はただの高校生。星見とオカルトが好きなだけだったんだ」と、黒髪の若者は答えた。
『聖書の内容に則している』と言う言葉を聞き、魔女はその2の告げていた言葉を思い出した。確か、『聖典とは逆行している』とか言う言葉だ。
巨大樹木の中にはもう入っていないが、巨大樹木は『進化の反対のことを表している』とかなんとか。魔女に思い出せるのはこの程度だったが、あんまり良くないことなんじゃないかと言うことだけは思い出せた。
樹木の全てが破壊された時に一体なにが起こるのだろうと魔女は好奇心のような嫌な予感のようなものを感じていた。
「(……とにかく、今回はこの国の樹木をなんとかしなきゃ)」
それが、若者達と魔女の目的なのだから。
そう、魔女は自身に言い聞かせた。




