知恵伐採14
「ところで、樹木はどこにあるんだろう」
黒髪の若者が零すと、
「樹木は、霊樹の方にある」
と男性があっさりと答えてくれる。『霊樹』とは『月の島国』に生えている、巨大な(とは言いつつ常識的なサイズの)樹木のことだ。霊樹の幹は大人が10人ほど手を繋げば一周囲める太さである。
「そうなんですか」
「樹木が生える前からこの国に居たから、知っているんだ。樹木がどこに生えたのかも」
驚く黒髪の若者に、男性は頷く。隊商長は静かにその様子を見ていた。
「霊樹の方に、連れて行ってあげよう」
「いいんですか」
「言っただろう、『君達の味方だ』と」
男性の提案に、若者達は驚く。黒髪の若者の言葉に、男性は口元を少し緩めた。
「だが自分が連れて行けるのは、樹木へ近付ける入り口までだ。その先からは君達の力で行ってくれ」
「樹木の入り口?」
「迷路のようになっている。君達なら迷わずにまっすぐ、樹木の人体の場所まで行けると信じているよ」
「ありがとうございます」
ということで、男性の案内で若者達と魔女と隊商長は霊樹の方へ行くことになる。「裏道を通りながらなのであまり国の紹介ができなくてすまない」と男性は告げていたが、若者達は大丈夫だと伝えた。
裏道を通りながら、男性は国の紹介をしてくれた。
「この国のことが大好きなんですね」
黒髪の若者は言う。
「そう、だね。……とても好きだ」
男性の声色には、嘘は混ざっていないようだった。
それから、段々と人通りの少ない道や植物に覆われた建物の裏などを通る。段々と自然に侵食された建物を見かけるようになって、森の手前に来た。
「案内できるのはここまで。行くべき方向に進めば、きっと君達なら霊樹まで辿り着ける。そうして、樹木を破壊してくれ」
そう男性が告げた。どうやら、この先に霊樹があるらしい。
「足は用意してある。そこの女性に、乗り方を聞くと良い」
その言葉と共に、黒い大きな鳥が人数分現れた。そして、男性は隊商長の方を見たのだ。若者達が鳥に気を奪われているうちに、男性は姿を消したようだった。
「……仕方ないですね」
小さく舌打ちをし、隊商長が乗り方を教えてくれる。
それから、霊樹と呼ばれる樹木のある方へ進む若者達。
「でも、巨大樹木の姿は見えないね」
「この国と一体化したなら、もう大きな姿では残っていないでしょうね。『花の島国』と同じような感じになってるんじゃないかしら」
周囲を見回す黒髪の若者に、魔術使いの若者が答える。
「ところで、この国の巨大樹木を守っている偽王国の奴と話をするつもりだって言ったが」
「なに?」
白髪の若者が、黒髪の若者に話しかける。
「本当に、会話ができると思っているか」
「うん。大丈夫だと思う。だって、この国をよくしようとしていたのがよくわかるから」
黒髪の若者が意見を変えるつもりはないようだ。
「樹木が無くなったら、そこから得られる資源はすべてなくなってしまうけれど。『霊の国』の実験結果を信じるなら、使われた資源は消えることはない。だから、今すぐにこの国が混乱に陥ることはないんじゃないかな」
「楽観的だな」
「そうかな? 事実を述べてるだけのつもりだけど」
そうして若者達は森の中を進む。




