知恵伐採7
『虚数世界』で、『暁の君』は1番目に声をかけた。
「……最後の樹木だ。分かっているな」
「は」
畏まり、1番目は頷く。
「樹木は破壊させる。だが、できればあいつらを仕留めて欲しい」
「……それは」
「俺の樹木を破壊されたら困るからに決まっているだろう」
そう、『暁の君』は断言した。
「樹木の破壊者達は、人間が囚われている樹木に興味がある。ならば、俺の樹木も破壊しに来るということだ」
それから、『暁の君』は助言者に振り返る。
「樹木に神を下ろすのは時間がかかる。そうだろう」
「ええ。樹木が残り一つにならねば、神は降ろせませぬ」
相変わらず、助言者は慇懃に同意した。
「ならば、さっさと樹木を破壊させよ。そうして、時間を稼げ。神さえ降ろせばあとはどうとでもなる」
「……はい」
×
「それで、樹木がたった一つになった後はどうすれば良い」
個室に助言者を呼び、その言葉を聞く。
「そうですねェ。……彼等の前で、神を下すのは如何ですか」
「彼ら……そうか、『樹木の破壊者』の前でか」
「然様です。彼等の出迎え成らば私奴にお任せを。相違なく、全員を連れて参ります故」
「だが、お前が居なくなっては誰が神降しを行うというのだ」
「其れは、貴方様ですよ」
「俺、か?」
「えぇ。『運命の樹木』の主は貴方でもある。故に、神を降ろすの成らば、貴方が行う他は有りませぬ」
「そうか。では、どのようにして神を下す」
「先ずは樹木を貴方様の魔力で満たす必要が御座います」
「魔道具を使って、樹木へ送るということだな」
助言者は、頷いた。
「そうして花を咲かせる必要があると」
「然様です。花が咲かねば神は降ろせませぬ故」
「ところで、樹木の花は魔力を吸うが、何に使っているんだ」
「顕現、ですよ」
「顕現、か」
「『熱』は確固たる姿を持って居りませぬ。それ故に、形状を保つ為に魔力を必要と為る。……唯、『虚数世界』では魔力の消費はしない様です。現世への顕現時にのみ、消費するものかと」
「そうか。よく調べたな」
「……研究者としての性です。お気になさらず」
「わかった。職業病ってやつだな」
そうして、『暁の君』は助言者を解放した。
×
「(……樹木が吸収した魔力、『熱』が消費した魔力については現世に還る事は無く。『虚数世界』に流れて居る様子……そうして、力を蓄えて居ったのでしょうねぇ)」
助言者だった男は、一人で考察を続ける。
「(道理で、現世に歪みが生じる訳です。物質としての『実』に、奇跡級の質感を被せた世界の、隙間。……世界を平らへ変えた、其の正体)」
虚な星海の世界を、視界に映す。




