知恵伐採5
船の中の会話で、今まで行った国は元々『同盟国』だと若者達と魔女は聞いた。
同盟国と『金の国』は、『古き貴族』当主と同盟国の継承権の無い王族を結婚させて繋がりを保っているらしい。
毎年、各国の王族と各当主達は顔合わせをしていたらしい。そしてどうやら、巨大樹木が生えてからそんなことをする余裕がなくなっていて、関係性は断絶している。
ただ、当主もその伴侶も存命中なので、大きな問題にはなっていないという。
「関係性はすぐに回復すると思います。結婚や契約に関連する公文書もありますし、伴侶という実物もいますからね」
そう、通鳥当主である隊商長は答えた。
「でも、生まれた頃から伴侶は決まってるってどんな感じなんだろ」
魔女は首を傾げる。
「政略結婚とおんなじですよ。ただ、伴侶は当主に心の底から惚れているという問題が起きますが」
「それって問題なの?」
「そうですよ。本来は出会う可能性があった運命とか全てを蹴って、当主の伴侶になるんですから。惚れられるこっちの身にもなって欲しいですよ」
そう言われて、魔女は隊商長とその伴侶である魔女の同僚の男のことを思い出す。彼は隊商長に心底惚れていて、雑談のほとんどが伴侶の話なのだ。(ちなみにうっかりと「そうだね」などと言う同意を示すと「彼女の何が分かるんだよ」とガチギレの説教を1時間ほど喰らう※強火の同担拒否らしい)(ただ、魔女の伴侶から聞く義姉の話や歩兵中将(死犬当主)の話を聞く限り、同僚の男が強火過ぎるだけっぽい)
「それって『本当の自分を見ていないみたいで嫌』」みたいな感じ?」
「……どうなんでしょうね。私が『通鳥当主』じゃなかったら、あいつはどんな運命を辿っていたのだろうと思うことはありますが」
「問題にする、って優しいよね」
「……そうでしょうか。まあ、その話はもういいんですよ。そうなってしまったんですから。これから生じる問題は、他国と混ざってしまった国達……でしょう」
「混ざった国?」
「そうです。特に『金の国』との同盟国以外の国、ですかね」
隊商長は少し面倒そうに、息を吐いた。
「混ざってしまった国は混ざったままで発展していくのか、再び分裂してしまうのか。……まあ、私が管理出来る範囲の話ではないので、深くは言及しませんがね」
「そっか」
やはり外国とかかわる『古き貴族』の当主だから気にするのかな、と思う魔女。
『案ずる事は無い。時間は掛かるだろうけれど、天地の神々の采配に依り解決する』
呪猫当主は特に気にした様子もなく答える。
「時間がかかるのが、嫌なんですよ。穏便に済めば良いんですけどね」
『ふ、成る様にしか成らぬ。……其れが神々の采配だからね』
「まあ、それはそうなんですけど。……あんたが言うと『本当はどうにか出来るけど運命がそう言ってないから手は貸さない』みたいな感じで嫌です」




