知恵伐採3
「樹木がなくなった国では、復興作業が始まっています。魔獣の被害も減って、冒険者達も樹木に行く必要がなくなりましたから、冒険者達は復興作業をしている様です。総合組合の仕事もそれが中心になるでしょうね」
船旅の中で、隊商長が若者達と魔女に現状の世界の話をしてくれる。世界中の魔獣は、巨大樹木が多く生えていた頃と比べて、随分と弱くなったらしい。それでも、人間が被害を被っていることに変わりはないが。
「樹木に囚われていた人達は、ほとんどが帰ってきているそうです。おまけに、みなさん健康になっている様ですね」
世界に残っている巨大樹木は二つだ。だから、行方不明として巨大樹木の中に囚われていた人達のほとんどは解放されている。そしてどうやら巨大樹木に囚われていた人達は、巨大樹木の魔力の影響を受けて持病や色々が治っているらしい。
「ただ、失われた時間は長いですからね。特に子供だった者は、教育の機会が失われています。そこをどうやって埋め合わせていくのか……」
巨大樹木が生えてから、もう十年以上経っているのだ。
「まあ、それは各国でやっていく話になるでしょうけれど」
そう、隊商長は呟いた。巨大樹木があった国にも、巨大樹木が生えなかった国にも行方不明者は出ている。そして、巨大樹木の破壊に合わせて行方不明者が帰ってきていた。だから、どの国でもこの問題は発生している。
「『金の国』では、教育の機会が失われた者達に向けて学びの機会を与えることになっています。死犬、呪猫、毒蛇、交魚、生兎、祈羊、薬猿、通鳥共々、王都と力を合わせていくつもりです。それに春蜥、夏鯱、秋狐、冬熊の4つの公爵領も手伝うそうなので、学ぶ気さえあればどこででも時間は取り戻せると思います」
「そうなんだ」
忙しくなりそうだな、と思う魔女。
「軍部……は特にやることないよね。復興作業とか魔獣退治とかそういう感じ以外に」
「まーそうですね。治安維持、頑張ってくださいね。まああなたに言ってもしょうがない話ですけどね」
隊商長は魔女にぼやいた。だが、魔女は『軍医中将』であって関わる内容は医術関係ぐらいだろう。
巨大樹木が無くなった世界で魔女がやるべきことは、『亜人たちをもとの姿に戻すこと』だ。薬がどのくらい必要になるのかは不明だが、必要な人に届くよう全力を尽くすつもりはある。
「(樹木を全部なくして旅も終わって、おうちに帰ったらやらなきゃいけないことでいっぱいだ……)」
薬作りもだが、軍医としての仕事の引継ぎも必要だろうか。
何気にやっと明言された公爵領。
代々順繰りで姫を王に捧げて王家の血が無闇に市井に行かないようにする役割を持つ。
後宮の主達である四季姫を輩出する家系。
後宮関連の話はこちら↓
https://uranai.nosv.org/u.php/novel/Pumpkincro56/(四季姫と後宮)
※結婚事情世界観の後宮は女性が安全に働く/宮廷で伴侶を探す役割を持つ
ちなみに樹木が生えて何年経っているのかと言うと、
樹木発生時に若者達が5歳で、『地の国』に来た時が18歳(魔術アカデミー卒業程度)なので
そのあたりを加味すれば解ると思われる。




