知恵伐採2
船の旅の中で、隊商長は『樹木の破壊者』に関わる噂話や評価の話をしてくれる。どうやら若者達の噂話は全世界に広がっており、知らぬものはほとんどいない状態だそうだ。実際に若者達と関わった者達が、良い噂を広げてくれているようでもあった。
みんなが応援している、のだそうだ。
「『樹木を全て伐採してくれ』と言う声がほとんどですね」
そう、隊商長は答える。だが、どこか『他人任せでいい御身分ですよね』と言いたげである。
「遂行したら褒賞もらえそうですけど、どうするんです?」
「褒賞?」
隊商長の言葉に、黒髪の若者(と魔女)は首を傾げた。
「おそらく『金の国』を中心とした助けられた国からです」
補足説明をした隊商長に「うーん、でも欲しいものは特にないんだよねぇ」と黒髪の若者は困った様子で答える。
「ずっと、村のみんなに帰ってきて欲しかったから。僕は僕のエゴのために、巨大樹木を破壊しようとしていたんだ」
黒髪の若者はそう零し、周囲の若者達に視線を配った。「みんなが付いてきてくれて、本当に良かった。僕一人だったら何もできなかったよ」
「何言ってるのよ。学校で私達に声をかけてくれたのはあんたでしょ」
「そうですよ。あなたのおかげで自分達はこうして一緒に旅に出ることができたんです。……おかげで父親の国も取り戻すことができました。感謝しきれません」
魔術使いの若者と聖職者の若者がそう言い、「そんな、大袈裟だよ」と黒髪の若者は照れた様子を見せる。
「ボクも、小さい頃の話だが、お前に救われていた。お前の無神経さには腹立つところにあったけれど」
「なにそれ」
少々気恥しげに、白髪の若者が告げる。それを黒髪の若者が笑った。
その様子を見、なんかより仲良しになったっぽいなと思う魔女。
魔女は若者達と一緒に旅に出たが、彼らに同行していなかったらどうなったのだろうと少し過ぎる。長女は、どこか穏やかな表情でそのやり取りを眺めていた。
「(……もしかしたら、ずっと一人で樹木を伐採する旅に出ていたのかな)」
若者達の目的が変わらない限りは、きっとどこかで出会っただろう。だけれど『地の国』で出会わなかったなら、現在のようにこうも簡単に樹木の伐採ができたとは考えられなかった。
「(きっと、これも『黒い人』が最初にくれた『都合のいいお守り』のお陰なんだろうな)」
内心で、魔女は『黒い人』に感謝する。『そーでしょ?』と言いたげな『黒い人』の気配を感じたような気がした。




