理解伐採18
「なんだか『偽王国』の人、どこか余裕そうだったね」
「『暁の君』の計画通りがどうとか言っていたわね」
「とにかく。巨大樹木を破壊したのですから、次の国に行くんですよね?」
馬車での帰り道、若者達は会話をしていた。
「あたしも伴侶見つけたから、帰ろーかな」
次女の呟きに、魔女は顔を上げる。
「もう帰っちゃうの?」
「うん。帰り用の許可証持ってるし。二人分」
魔女が寂しい、と眉尻を下げると、次女は困ったように笑った。
「そっか。……気を付けて帰ってね」
「うん。おかーさんも、気を付けて行ってね。運命が『危ない』って言ってるから」
「危ないの?」
「うん。海の上とか。『黒い人』が守ってくれてるみたいだけど」
魔女の身体を見、次女は首を傾げる。
「『使い魔』だって言ってた精霊、居なくなっちゃったんでしょ? 居たら多分大丈夫だったんじゃないかなぁと思うんだけど」
「そっか」
「ま、居ないんならしょうがない。そーだ。あたしから贈り物をあげる」
「贈り物?」
「うん。お菓子」
「お菓子?」
「そう。船の中で食べてね」
そうして、包装紙に包まれた箱を取り出し魔女に渡した。
「あ、ただのお土産だから。呪猫の」
「なんだー」
「おとーさんやおじさんみたいに、何か特別なものをあげられたら良かったんだけど。まあ、要らないかなって」
「どういうこと?」
「運命がそう言ってる、ってやつ」
「ふーん」
頷きつつ、魔女は箱を鞄にしまう。
「あ、あとおねーちゃんにもお土産あげといて。もう居ないだろうし。会った時でいいからさ」
「うん。会えるかわかんないけど……」
「だいじょーぶ。会えるよ」
「運命がそう言ってる、ってやつ?」
「うん、そう」
「そっかー」
次女がそう言うのならそうなのだろう、と魔女は納得した。
「ところで、おかーさん」
「なに?」
「あたしに訊いておきたいこととかない?」
「訊きたいこと? うーん……あ、伴侶のこととか?」
「そうでしょ? 聞きたいでしょー?」
「え、何かあるの?」
「ううん。何もないけど」
「ないの?」
「あ、『月の先』で会えるよ。よくわかんないけど」
「そうなんだ」
そういえば伴侶も『月の先』がどうとか言っていたな、と魔女はふと思い出す。
「あとね、よくわかんないけど『黒い人』と一緒にいるっぽい?」
「そうなんだ」
「おかーさんを見守ってるけど、基本的には『黒い人』はおとーさんと一緒にいる感じ」
「『おばあちゃん』はおかーさんと一緒にいるから、ちょっと反対って感じだね! それで釣り合いを取ってるのかな?」




