理解伐採16
それから。若者達は次女の導きにより魔術陣を見つけ、あっさりと山頂まで辿り着く。
「待っていたぞ」
そこには成熟した女性の姿があった。
「きみは、誰」
険しい表情で黒髪の若者が問いかける。
「私は理解の大樹の守護の役を司る、『精霊の偽王国』の44番目」
そして44番目は合図をする。
「こいつらは人質だ」
見ると、そこには何人かの人間がいた。見たところ、偽王国の者とそうでない者が居るようだ。
「23番目、58番目、62番目、37番目、17番目! 逃すなよ?」
声をかけられた者達は杖を一般人達に向けている。
「なんで、そんな悪いことするんだ!」
叫ぶ黒髪の若者に
「自分にはこの道しかなかったんだ!」
そう、44番目は叫び返す。
「そんなわけないよ。その杖、前は宮廷魔術師だったんでしょ?」
だが、次女は至極冷静に44番目の持つ杖について指摘した。
「その身の丈を超える杖。宮廷魔術師にしか許されない大きさだよ」
すると、44番目も「そうだ」と認めた。
「自分は、『金の国』の宮廷魔術師だった……だがある日、ある男に全てを台無しにされたんだ! ある論文発表の日の事だ」
そして44番目は語りだす。
「私の理論は完璧だった……そのはずだったのに、あの男は! 私を質問攻めにして恥をかかせたんだ!」
「でもそれって、論文発表の話でしょ?」
剣幕に驚く若者達をよそに、魔女は聞いた話に冷静に突っ込む。
「だったら理論に穴があれば突かれるのも当然というか」
「うるさい! あいつ、私の全てを否定したんだぞ! 『素人質問で恐縮ですが』とか『その分野には明るくないのですが』とか言っておきながら嫌な質問ばかりしてきやがって! 『私の論文を引用してくださり有難う御座います。処で一つ質問なのですが』って言われた時の気持ち、分かるか?!」
どうやら、その指摘をしてきたのは『蘇蛇宮の室長』らしい。あれ、と魔女は心当たりを覚えた。
「『貴女が今発表した研究には致命的な個所が3か所有るのですが』とか『其の理論を作ったのは私ですが』とか、『参考文献が不十分です』『調べが甘すぎるのでは』『すべき事は事前に確認しましたか』『先行研究で既に示されていますね』『想像を結果に入れるべきではありません』とか! 鬼畜!」
「……」
呆れた様子で、魔女は口を尖らせ眉を寄せた。夫らしい話であった。
『……お前は、其の男に殺され掛けたのかな?』
するり、と呪猫当主が現れ、静かに問う。
「それは、無いが……」
『其の男も、一度、別の者に打ち砕かれている。……寧ろ、お前依り最悪な方に。其の男は未来も命も奪われ掛けて尚、立ち上がった者だ。……お前は、そうしなかったのだね』
その話を聞いて、魔女はじんわりと嬉しくなる。呪猫当主は感情が見えづらくはあるが、弟に対して思うことはあるのだと知られたからだ。
「打ち砕かれているだと!? そんなこと、どうでもいい! この私に、恥をかかせた。それが許せなかった!」
そして、逆ギレした44番目が襲い掛かってきた。
それから、若者達が人質を取り返し44番目が不利になる。
「そうだ、お前! お前は『転生者』なのだろう!? 情報は掴んでいる!」
そして唐突に、黒髪の若者に声を掛けた。
「元の世界に帰りたくはないか?」
どうやら、44番目は珍しくも転移者であり、元の世界に帰りたいと思っていた者だったらしい。……だが。
「死んじゃってるし、どうでもいいかな」
そう、黒髪の若者は断った。
「家族のことは確かに気になるけど、きっと今の自分のことに気付かないだろうし。それにきっと前を向こうとしているから、いらない」
そう切り捨てる。その拍子に、黒髪の若者は光を放ち、魔力の質が格段に上がった(のを魔女達は感じ取った。)どうやら、魂が覚醒したらしい。
ちなみに今回出ていた偽王国の人達、
44番目→宰相
23番目→大将
58番目→司令官
62番目→中将
37番目→旅団長
17番目→少将
とかいう役割持ってるんですが、魔女ちゃん興味ないのでそのあたり割愛しています。
大奥義書とか赤き竜の六柱関連で設定練ろうとしたその名残ですね。
ちなみに10名の樹木の守護の名前、上記の役割とか、役割三つ持ってる人とか、意味があって合わせているのですが考察は必須でないので気にしなくとも良いです。
簡単に言うと権能の類似、アナグラム、名前の類似、別名、役割の重複、画像の間違い等ですね。
調べれば調べる程、「昔の人はてきとうだったんだな」とか思いますよ。
でも一番の理由は人手不足(偽王国的理由)&68人も出せるわけないじゃん(作者都合)てきな超個人的なやつなのです。




