理解伐採15
「この霊峰、てっぺんまで登らなきゃいけないのかなぁ?」
「さすがにそれはめんどくさいな」
「どこか、移動用の魔術陣とかあるんじゃないの? この霊峰って観光資源なのよね?」
「じゃあ、樹木以外の魔力の気配を探さなきゃですね」
黒髪の若者、白髪の若者、魔術使いの若者、聖職者の若者が口々に呟く。
「でもこの辺り、魔力の気配がすごく濃くて探知とかやりにくいんだけど……」
魔術による探知を検討したらしい、魔術使いの若者が眉を寄せた。
「じゃあ、占いやってみようか」
「占い?」
次女の唐突な言葉に、若者達は首を傾げる。
「うん。大丈夫。簡単なやつで運命を掴むだけだから」
「また運命って……」
だが次女は気にしていない。次女の言葉に、魔術使いの若者が困った表情になる。
「ほい。……うーん、こっちか」
「どうやって調べたの?!」
ぽい、と枝を投げ、次女はすぐさま方角を判断した。それに黒髪の若者が目を丸くする。
「運命を掴んだだけだよ。まあ、感覚的なものだから、占術師や魔術師とかじゃなきゃ分かりにくいかもね」
次女は涼しい様子だ。家に居た頃もそんな感じだったな、と魔女は懐かしい気持ちになる。
「……かなり特殊なことしてるわよ、その人」
「そうなんだ」
顔をしかめた魔術使いの若者に、黒髪の若者と他の若者達が頷いた。
「道具を運命に乗せれば、大体運命を掴むことができる……と、あたしは思ってるんだけど。これ、あたし独自の感覚らしいんだよねー。呪猫当主にも『其の才覚は大事にしなさい』って言われてるから、別に悪いことじゃないんだと思うけど」
言いつつ、次女は魔女の持つ札へ視線を向ける。
「ともかく、運命がこっちだって言ってるから、こっちに進もうー」
「信じて大丈夫?」
「まあどこに向かうか決まってないですし」
「したがってみるのもいいんじゃない?」
と言うことで、従うことにした若者達。それに合わせて魔女も歩き始めた。
「次はこっちー」
「すごい道を通っていくわね」
「でも、不思議と魔獣や野生の獣とは出会いませんね」
「すごいねー」
「すごい違和感だな」
表情の険しい白髪の若者に、黒髪の若者は首を傾げる。
「違和感?」
「そうだ。薄い膜の中を通っているかのような違和感」
黒髪の若者の疑問に、白髪の若者が答えた。
「うん。だって、樹木の根っこの上を通ってるからね」
それに、次女が頷く。
「樹木の根?」
訊き返す黒髪の若者へ、次女は視線を向けた。
「樹木はきっと、分かってるんだよ。君達が樹木自身を助けてくれる存在だって」
「巨大樹木を、助ける?」
「だって、樹木自身は望んでないっぽいもん。こんなに影響力を強めてしまったこととか、意図しない相手に主導権を握られていることとか」
「他の樹木もそうだったのかな?」
「さぁ? 他の樹木は知らない。少なくとも『この樹木は』って話だから」




