理解伐採12
「とりあえず、『偽王国』の人達には気をつけてね。なんかこの国には多いんだって」
軽く周囲を見、次女は魔女に告げる。
「この国の樹木を支配している偽王国の人が、仲間をいっぱい連れてきたとかなんとか」
「ふーん」
「あんまり興味なさそうだね」と小さく笑い、次女は若者達の方を向く。
「あたしは伴侶探すけど、他のみんなは『樹木が最初に生えていた場所』を探したらいいんじゃないかな?」
そのアドバイスに若者達は頷く。
「この国全体から変な魔力の気配がするけど、ちょーっと魔力の気配が濃い場所があるっぽいし。……霊峰に生えていたんだし、その周辺を探すのが良いかもね」
それから、若者達が霊峰まで運んでくれる馬車を探す。魔女が隊商長や友人Bに頼んだら、手配してくれたようだった。手配してくれたものは、荷馬車だ。
「まあ、伝手ですよ。交易仲間ですし」
「通商は助け合いだからねー」
と隊商長と友人Bは言う。
友人Bは「船の方に戻るね」と告げ、隊商長は「案内役、と言うか御者替わりについていってあげます」と言っていたので、今回は隊商長も来てくれるようだ。
馬車に揺られる魔女と若者達。
隊商に乗っていた頃と違い、景色がみるみる変化していく。だが、魔女はそこまで気分は高くなかった。
「本当に全部の植物が黒い葉っぱ……」
見る植物の全てが、黒一色なのである。あまり面白くなかったのだ。
「なんかしょんぼりしてるわね」
「やっぱり緑の方が見慣れていますしね」
魔術使いの若者と聖職者の若者が気遣わし気に魔女を見ていた。
「いろんな植物あるけど、なんか変な感じ」
薬に使えないかもしれないのでしょんぼりしている魔女だった。
魔力の影響を強く受けた植物は、成分に影響を与える可能性が高いために魔法薬の作成には向いていないのだ。
「そういえば、この国の人達、野菜とかどうしてるんだろ。野菜は緑のままなのかな?」
確かに気になると若者達も頷く。
「収穫して暫くすると、普通の植物に戻るらしいですよ。魔力とかが抜けるんでしょうね」
そう、馬を操りながら隊商長が答えてくれる。
「逆に、樹木の影響を受けている間の野菜が『珍味』として出回っているとか」
それはどこか呆れた口調だった。
「ホント、生魚や生卵を食べる変な人達だと思っていましたが。こういうのも食べるんですね。……なんか、黒い紙みたいなものも食べてませんでしたっけ。海藻の」
「海苔? 確かに言われて見たら色とか似てるかも」
黒髪の若者は頷く。
「多分それです」
海苔と言われて魔女も、呪猫で見た黒くて薄い物体を思い出すのだった。




