理解伐採11
「なーんか、変な気配がいっぱい」
上陸した後、周囲を見回し魔女は呟く。
「精霊がいっぱいいる感じがするよ」
そう、次女が魔女に声を掛けた。
「精霊?」
『此の国の者は、呪猫と同じように精霊を使役する者が多いからね』
聞き返すと、ぽん、と音を立てて呪猫当主が現れる。
「そうなんだ」
「というか、そもそも呪猫の祖国だしね」
「そういえばそうなんだっけ」
道理で雰囲気に似ているのだな、と魔女は納得した。
海に囲まれているからか、思いの外湿度の高い土地のようだ。
「うわ、なんかじっとりする」「空気重いわね」などと若者達がそれぞれ感想を述べていた。
大きな港のところに総合組合の建物がある。
「国の外から来た冒険者の皆さんが利用する港でもありますからね」
そう、受付の女性は答えてくれた。
「最近、冒険者の方々は国の開墾に駆り出されているようですね。それと、樹木の葉を集めている方々もいらっしゃるようですが」
受付の女性が言うと、「どうして?」と黒髪の若者が問う。
「内部の探索ができる樹木がなくなってしまったのも、その要因かもしれません」
「探索ができない?」
「今、巨大樹木が生えている国はここ『花の島国』と『月の半島』だけなんです」
「そうだね」
「そして国中が巨大樹木の内部のようになっていて、巨大樹木の姿が見られないんです」
「巨大樹木の姿が、ない?」
「数年前はあったはずなんですけれどね?」」
そうして受付の女性と黒髪の若者との会話が終わった。
「霊峰に生えてるとか言ってなかった?」
総合組合の建物を出た後、黒髪の若者と他の若者達は魔女の次女を見る。
「言ったじゃん、樹木が『生えていた』って」
次女は平然とした様子だ。
「叙述トリック過ぎるわ……」
「では、どうやって樹木を伐採します?」
魔術使いの若者は項垂れ、聖職者の若者は周囲を見回した。
「樹木の伐採っていうけどさ、本当に伐採してるの」
「え?」
次女の言葉に、若者達が次女へ注目する。
「実際に巨大樹木は無くなっているわけだから、伐採でいいと思うけれど」
「ふぅん」
魔術使いの若者の言葉に、次女は頷いた。
「何か気になる?」
こっそりと魔女は次女に声を掛ける。
「だってさ、あんな物理的魔力的に大きいものが消えてるんだよ? 絶対なにか、裏があるよね」
次女はどこか考え込む様子で腕を組んだ。
「それと、おかーさんの杖に樹木とよく似た気配の魔力が集まってるのも気になるし。多分それ、『対』があるよね」
「対?」
パッと顔を向けられ、魔女は自身の持ち物の杖が不思議な魔力を纏っていた事を思い出す。
「うん。だって、片方に偏り過ぎてる。釣り合いを取るための対が、どこかにあるはずだよ」
「でも、そんな話聞いたことないなぁ」
「ふーん。じゃあ、偽王国の人が回収してるのかもね」
次女の推測を自身の体験で少し否定するが、次女はどこか確信めいた様子だった。
「多分だけど樹木を生やした人の本当の目的は、その『樹木の魔力の塊』だよ。おかーさんが持ってるやつ」
「本当の目的?」
「うん。天地をつなげるのと、魔力を吸うのはその副産物。樹木が魔力を集めるから、天地が繋がって魔力を吸うんだよ。人を保存するのは、樹木発生の核になった人の魂の願いかなー『人の命を助けたい』とかそういう願い」
そうして、魔女と次女は軽く会話を済ませた。




