理解伐採8
「次の『花の島国』」っていう国は名前の通りの島国だよ。念のために言っておくけど」
そう、友人Bは魔女と若者達に告げる。(隊商長は分かっていると知っているので入れていない)
「だけれど。結構規模が大きいから、周囲が海に囲まれているだけの国だと考えておいた方がいいよ」
『島国』と聞いてよくイメージされるものとは違うのだと、友人Bは人差し指を立てた。それに魔女と若者達は頷く。今まで向かった国は大抵が陸続きで、海など端にしかなかったからだ。
「南国でもないですし」
そう、隊商長が零す。国のある場所は、言うなれば北側なのだ。かなり気候は涼しいだろう。
「あと、『花の島国』は『偽王国』の支配を受けている国です。いつも通りに、油断しないようにしてくださいね」
と、隊商長は付け加えた。
「あと、他者には厳しい国だそうだよ。だから、対応を間違えないように特に気をつけてほしいかな」
友人Bも付け加える。
「他者には厳しい?」
「樹木が生える近年まで、同盟国以外とは交易をしなかったんだ。だから、よそ者には厳しい」
「そうなんだ」
疑問の声を上げる黒髪の若者に、友人Bは理由を教えてくれる。素直な黒髪の若者が居ると、話が聞きやすいな、と魔女はなんとなしに思うのだった。
「それと、魔術使いは歓迎されるはずだよ」
「魔術使いが?」
次女の言葉に、次は魔術使いの若者が声を上げる。
「『花の島国』は魔術に特化した国だから。新しい知識が欲しいんだろうなーって感じ。魔術に関する新しい知識は、国関係なくかき集めてるって聞いたよ」
と次女が言う。それを聞き、「(伴侶もきっと一緒にいきたかったんだろうなぁ)」と、思ったのだった。魔術の研究が好きな人だから。
「後は錬金術も求めているんだったかな。だから、この子も歓迎されると思う」
友人Bは魔女を見る。
「ふーん」
「薄々思ってたけど、なんか元気ないね。どうしたの」
友人Bがやや戸惑った様子で、魔女を見る。
「使い魔だった大きな猫が居なくなってから、ずっとこんな感じです」
魔女の頭を撫で、隊商長が代わりに答えた。
「大きな猫?」
「うん。ねこちゃん……居なくなっちゃったの」
「へぇ。命令でも帰ってこない感じ?」
しょぼくれる魔女に、友人Bが首を傾げる。
「命令文は完璧に作ったつもりだったんですがね」
『調伏の文言もだ。……流石、と言うべきか』
隊商長と呪猫当主がぼやく。それは感心、と言うよりも呆れの感情の方が乗っている様に魔女には感じられた。




