理解伐採7
虚数世界に在る拠点の王座に、『暁の君』は座って居た。そして
「とうとう、お前達だけになったな」
と、目の前の二人へと声を掛ける。
「……主……」
44番目が、陰鬱な顔を更に陰鬱にして言葉を零す。
「主」
その様を放置し、1番目が声を上げる。
「どうした。発言を許そう」
「は。ありがたき幸せ」
礼の姿勢を取り、1番目は口を開く。
「主。樹木が伐採されることを、御存じでしたね?」
「!?」「何を、」
目を見開く44番目 と、声を漏らす28番目。それに構わず、『暁の君』は息を吐いた。
「……ああ、そうだ」
「やはり、そうでしたか」
「なんで……っ!」
1番目は合点がいった、と頷くが、「納得がいかない!」と35番目が抗議の声を上げる。
「お前達に、全力を出してもらいたかった」
静かに『暁の君』が告げると、35番目は大人しくなった。
「……樹木の話、どこまでが真実ですか」
「全部だ」
問う1番目に、『暁の君』は堂々とした様で答える。
「(……29番目が言うには、だが)」
他の魔術師も何も言わなかった。ならば、問題はないはずなのだ。
「花を咲かせた樹木が天地の魔力を吸い上げ、『神を降す』。これは真実だ。我らが目指すべき目的であるのも、事実」
「――だが」言われた事を思い出しながら、勿体ぶった風に話す。
「神を降すべき樹木は『運命の樹木』のみ、だ」
「なるほど」
頷く1番目に、『暁の君』は内心で息を吐いた。
「大変お待たせ致しました」
「待っていたぞ、29番目」
突如現れた29番目に、周囲の者は一瞬動揺する。
「51番目。仕事はしているんだろうな」
44番目が苛立った声を上げると、
「仕事は無論、行っております」
淀みなく答え、「なら良い」と面白くなさそうな表情で44番目が鼻を鳴らした。
「仕事って何」
「『殻』を集める仕事ですよ」
声を上げた35番目の方を見、29番目は簡潔に答える。
「その殻で何をするのよ」
今度は28番目が問うた。
「全てが揃えば分かります」
「何それ」
曖昧な返答に、28番目は表情を歪める。
「15番目」
35番目がぶっきらぼうの声をかけた。
「其の仕事は終えております故、別の名でお呼び頂ければ、と」
「生意気」
「何です。最も早く花を咲かせて見せたでしょうに」
「ぐ、」
29番目の指摘に、言葉を詰まらせる35番目。
「おい、お前。樹木の魔力を纏ったガキが居ただろう。なぜ仕留めなかった。攫っただろう」
次に、5番目が声を上げる。
「ええ、確かに。ですが、計画には支障が無いと判断致しました故、見逃しました」
「『見逃した』だぁ? 逃したの間違いだろ」
「……ふふ、いえ。そうやもしれませんな」
余裕そうな29番目に、5番目は舌打ちした。
「それで、29番目。計画の進行はどうだ」
「無論、順調で御座いますとも。『樹木の破壊者』共が樹木を剪定したお陰で、『運命の樹木』へと依り魔力が集まりましてで御座います」
『暁の君』へ29番目は丁寧に報告する。
「……伐採も、『樹木の破壊者』の存在も計画通り、ってわけか」
5番目は忌々しそうに吐き捨てた。




