理解伐採5
「そういえば、君はどうして一緒にきたの?」
黒髪の若者は不思議そうに魔女の次女の声を掛けた。他の若者達も、言い出しはしなかったが不思議そうにしている。実際、次女の目的は魔女と隊商長、友人Bにしか話していない。
「あー、あたしの目的?」
「そーいえば言ってないなー」と呟きつつ、次女は若者達の方を見る。
「探し人を見つけるってやつだから、君達はあんま関係ないよ」
「『探し人』?」
「そう。あたしの伴侶になる人。なんか『花の島国』に居るんだって」
より不思議そうな黒髪の若者に、次女は説明した。
「じゃあ、上陸したらお別れする感じ?」
「ううん。そうでもないっぽい」
「どういうこと?」
問う黒髪の若者に、次女は「なんて言うかなー」と呟き周囲に視線を向ける。
「『樹木の破壊者』に付いて行ったら何とかなるかもって」
「誰かが言ったの?」
「ん? 運命がそう言ってる」
「え?」
次女の返答に、黒髪の若者は目を瞬かせる。
「だから。運命がそう言ってるんだってば」
「運命って?」
「うーん。説明がちょーっと難しいんだよね。運というか、命の流れというか」
『運命とは『天の神』が司る、命の運びの事よ』
「わ、おじさん」
不思議そうな黒髪の若者(と他の若者達)にどう言おうか次女が悩んでいると、呪猫当主がするりと現れ口を挟んだ。
「命の運び?」
『運とも呼べるが。偶然、必然……まあ、好きに呼べば良い』
『才知、才覚とも呼べるが』と言いつつ、よく分かっていなさそうな黒髪の若者に答える。
『正しく運命の在る者は、全てが上手くいく。其の様な運命が定まっている。……仮に、道中がそうでなくとも。最終的には良く成る、其れが命の運びだ』
「才知、才覚ってのは初めて聞いたかも」
ふと次女が呟いた。すると呪猫当主は次女の方を向く。
『……ふむ。まあ此れは私個人の見解なので、正しくは無い』
「おじさん自身の見解? 個人の意見を言うなんて珍しいね」
『『運が無い』者も、機転と技能さえ有れば運命に抗える、と言う事だ』
「そうなの?」
『……実例を見た。其れだけだ』
「そうなんだ」
やや不服そう(のようなそうでもないような)様子の呪猫当主に「(なんか珍しい顔してるなー)」と思いつつ次女は頷いた。
「まー、『運命』ってモンは厄介ですよ。逃れられない、と定められていますからね。基本的には」
その様子を見ていた隊商長も口を挟む。
「うちの旦那とか、まさにそうです。神の決まりの下に定められた『運命』で人生そのものが変わってしまった。……当人は『今の方が幸せ』だって言ってるんでどうしようもないですけどね」
どこか遠い目をする隊商長に、魔女は同僚の男のことを思い出した。
「でも私の上司だった人は自称では『運が悪い』のですが、そう言う風にはあまり見えなかったもので。呪猫当主の意見は一理あると思いました」




