理解伐採2
「君達の居場所は、今日からここだよ」
友人B案内された場所は、思いの他に広い。
言うなれば、きちんと人数分(以上)の座席があり食事を摂る場所や寝る部屋もある様子だ。
「『荷物のついでに運ばれる』って言っていた割には結構な高待遇じゃない?」
それを魔術使いの若者が指摘すると、
「まあお客さんを乗せるんならこうなるよねって感じ」
と友人Bは魔女の次女を手で示して少し苦笑いをした。友人Bの動作に合わせて、若者達の視線が次女の方へ向く。
「呪猫の姫?」
次女の呼び名に魔女が疑問を返すと、
「うん。お転婆姫」
「うわぁ」
次女が頷いた。どうやら認知済みのあだ名のようだ。
魔女自身は(次女を)育てている間も確かにお転婆だったなぁとは思っていただが、呪猫の地にもそれは広まってしまったというのか。
「……」
ふと手元の札を見る。呪猫当主は何も言わなかった。
「呪猫当主にもちょっと怒られたことはあったけど、少ししたら何も言われなくなったよ」
あっけらかんとした様で次女は答えたが、それは一体どんな心境だったのだろうか。(実際のところ、いざという時には綺麗な所作が出来、占いや魔術の実力がトップクラスだったので言う必要がないと判断されただけである)
「この海での旅は1週間くらいかかるから、覚悟しといてね」
友人Bは魔女と若者達、隊商長に視線を向ける。
「荒野の旅とおんなじだよ、大丈夫」
そう黒髪の若者は頷いた。他の若者達も同意のようだ。魔女も隊商長も時に言うことはない。
「いいや。夜の不安感を舐めない方が良い」
だが、友人Bはやや険しい表情をした。
「夜の不安感?」
「まあ。なれば嫌でも分かるよ」
首を傾げる若者達に、友人Bは苦々しい表情のままで答える。
「そういや君達、『樹木の破壊者』って呼ばれてるんだっけ」
友人Bは唐突に話題を変え、若者達に声を掛けた。
「大体悪い噂は立っちゃいないよ。君達、よほど『良い子』だったんだねー」
そして、どこか感心している声色だ。
「ま。あの子と一緒だから、そこまで性格は悪くないだろうとは思っていたけどさ」
と、一瞬だけ魔女に視線をやる。「中々にいい子ちゃんそうじゃないか、君達」と友人Bは笑った。
「そうだ。この船で出される食事は一流だよ。安心してね」
そう、友人Bは告げた。「一流だって!」と黒髪の若者が喜び、それに呆れる若者達。その様を見、
「本当に、こんな良い子達に大変な運命を背負わせてしまうなんてね」
と、友人Bは小さく零したのだった。




