表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
『奈落』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

535/600

『奈落』2


「やっほー、おかえりー」


 止まった牛車から出てきたのは、魔女の次女だった。呪猫特有の服を着ている。


「あれ、呪猫(あそこ)出られたの?」

「うん。少なくとも『金の国』(ここ)で魔術師は自由だよ。あと、あたし魔術師じゃなくて占術師」

「そうだっけ」


魔女が上げた声に、手をひらひらと振りつつ次女は軽く返す。

 次女は呪猫当主が倒れてから、呪猫当主の息子(従兄弟)達と協力して呪猫の立て直しを行なっていた。魔女達が国に帰ってきたからと言って、わざわざ出迎えるほど暇ではないはずだ。


「で、お客さんだよ。どうしても会いたいって人が」


次女はそう言い、牛車の(すだれ)を半分ほど上げる。


「御機嫌宜しゅう、御座いますね。『薬術の魔女』様」


顔を真っ白な布で覆われた女性が、牛車の奥に座っていた。絹糸のような黒髪がさらりと揺れ、艶やかに光る。


「はわー?!(呪猫当主の伴侶(お義姉さん)だー?!)」


 美しく色気のある動作で(あによめ)は簾に寄り、相対的に魔女(と巨猫)に近付いた


「して。其処な獣、申し開きは有りますか?」


扇子で口元(らしき箇所)を隠しつつ、見下ろすような動作をする。巨猫は魔女の足元で平常通りで居た。耳は下がっていないし、尾にも変化がない。何とも思っていないようだ。

 一瞬でもふりでも反省する様子を見せれば良いのに、とは思ったが(兄上の前で)そんな事をする人でもなかったな、と思い直した。


『止めないか』


ぽん、と音を立てデフォルメチックな猫が姿を現す。


「あ、薄紫のねこちゃん」

「霞色ですわ」『霞色だが』『霞色ですな』


魔女の呟きに、(あによめ)と呪猫当主、巨猫の声が重なった。


「ああ、旦那様! お会いしとう御座いました! 此の私、寂しゅうて仕様が有りませんでしたわ」

『そうか。私も会いたかったよ』


とても感動した様子で、(あによめ)は声をあげる。


「そんな! 勿体無いお言葉……感涙が止まりませんわ」

『涙を流してから言いなさい。呪いは駄目だ。私にも影響が出るからね』

「は、そうで御座いましたわね……きぃ、小癪ですわ……っ!」

『毎日毎時間、私の身体の側にいるではないか。何処に寂しく思う要因がある』

「お話が出来ませんわ。旦那様のお声が聞きとう御座いましたの」


二人の様子を見、魔女は隊商長と同僚の男の関係性を思い出した。確か当主と伴侶は『神との約束』によって、強い情を抱くのだと言う。(伴侶が強め、当主は薄め)


「奥様、そろそろ本題いいですか?」

「そうでしたわ。取り乱してしまいましたわね……」


 次女の言葉に小さく咳払いをし、(あによめ)は居直った。


「本題って?」


首を傾げる魔女(と巨猫)。


「貴女の次女の、伴侶を探していただきたいのです」

「へ? 伴侶?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ