慈悲伐採18
それから、若者達は出国のために隊商と合流する。無事だったことを喜び合った。隊商長が次に向かう国について話そうとした時。
「おい、そこの隊商」
黒尽くめの者が声をかけた。「あっ!」「アンタは……!」「『偽王国の死神』!」若者達が声を上げる。(そこで魔女も、誰だったのかをなんとなく思い出した)
「何ですか」
やや面倒そうに隊商長が返事をする。
「金は払う。そこの連中と同じところに運んでくれ」
偽王国の死神は、至極真面目な声色で伝えた。
「だそうですが」
どうしますか、と言いたげに隊商長は若者達に視線を向ける。魔女と巨猫については、どうでもいいだろうからわざわざ聞かなかっただけであった。
「何もしない?」
やや険しい表情で黒髪の若者が問うと、
「何かするならとっくにやってる」
そう真剣な表情で偽王国の死神は答える。
「わたしは構わないけど」
魔女は巨猫を撫でながら言った。巨猫も嫌がる素振りはなかったので、彼も大丈夫なのだろう。
そして、若者達も警戒はしつつも同行を許可した。同行する理由は「お前達の旅の行く末を見たい」からだそうだ。偽王国との関係について問うと、
「方針が合わなくなった」
とだけ、答えた。どうやら巨大樹木にも関わっていないそうなので、かなり自由なのだろうと若者達は判断したようだ。
ちら、と魔女が巨猫を見るが、巨猫は動揺する様子も見せなかったので多分問題ないはず。
「人数増えましたね」
周囲を見、隊商長は呟く。魔女と巨猫、若者達3名とその3とその1、偽王国の死神が居た。
「僕達は横から付いていくよ、ね?」
「勝手に決めんなよ……良いぜ。問題はねぇ」
そう言い、その3とその1は召喚獣に乗る。それを見て、若者達が何やら感動していた。騎乗できる召喚獣を持つものは珍しいらしい。
「次はどこの国に行くの?」
「こっちにも予定がありますからね、『金の国』ですよ。材料の補給をしなきゃいけません。あと客車のメンテナンスです」
魔女が問うと、隊商長は周囲に伝える風に答えてくれた。それから魔女に近付き声を落とす。
「……あと、そろそろ旦那が限界かもしれないんでついでに顔を見せてきます」
「そっか」
魔女は自身の同僚の男を思い出した。彼は随分と伴侶のことを気にかける(柔らかい言い方)人物なので、きっと隊商長の帰還を喜んでくれるだ。
と言うことで、魔女と若者達は『金の国』に向かうことになりそうだ。客車をメンテナンスするとも言っていたので、しばらく滞在することにもなるだろう。




