表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:慈悲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

530/600

慈悲伐採16


 それから、10層で枢機卿と合流する。10層は礼拝堂のような場所で、奥に垂れ幕らしき布のかかった立方体がある。案内人らしき者達が周囲に居た。その1が言うにはどうやら幹部らしい。


(おおよ)そ、想定通り。ああ矢張り、見通す目はかなり正確の様です。助かります」


 情報交換をすると、枢機卿は微笑する。


「私達を10層(此処)に集めたのは、処分するおつもりでしたか」


穏やかな様子のまま、枢機卿は周囲の者に問いかけた。


「殺気が漏れておりますよ」


 その言葉に一瞬動揺しつつも「悪く思うな、『慈悲の王』様の命令だ」と、幹部達は取り出した武器を向ける。どうやら『樹木の破壊者』と『勇者様』、『教の国』に干渉する枢機卿を一気に仕留められる機会だと思われていたらしい。


「やめなさい、玉座の前ですわよ」


唐突に声がかかる。声の方を向くと、立方体にかかっていた垂れ幕(カーテン)が上がるところだ。


 そこには王冠を戴き玉座に座し王の雄姿があった。


「きみは、誰」


険しい表情で黒髪の若者が問いかける。


「私は慈悲の大樹の守護(ディアボロス)の役を司る、『精霊の偽王国』の28番目(アスタロト)


×


「皆を平等にして何が悪いの?」


 28番目(アスタロト)は主張する。


「努力した者が報われないなんて、おかしいよ」


だが、黒髪の若者は否定した。


「報われているでしょう? 上位の階層へ上がれて、下位の者に施しを与えられるのだから」


『よくわからない』と言いたげな28番目(アスタロト)に、


「上に行くほど搾取される、下の者には知識を与えられない。娯楽を知らない。家畜のようである。そんな世界が『報われてる』だと? ふざけるのも大概にしろよ」


「どんなに働いても搾取され、低い『幸せ』だけが分配されるなぞ、人間の家畜化だとしか思えねぇ」と、その1は吐き捨てる。


「休むと誰かに密告されて何処かへと連れていかれ、帰ってこない。病気になった者も何処かへ連れていかれる。家族と階層が分かれてしまい、もう何年も会っていない。……そんな話も山ほど聞いた」


その1が訴えても「それが何かしら」と28番目(アスタロト)は気にも留めない。だが。


「あなた、王族ではないし、過去に犯した犯罪(暴行罪)で指名手配もされておりましたよね。……()()()()()()()()()()()()()()?」


そう枢機卿が告げた途端に、28番目(アスタロト)は激昂する。その変わり様は凄まじく、魔女は思わず巨猫にしがみついた。上品そうな様は(なり)をひそめ、暴力的だった。


 メキリ、と聞いたことのある音が鳴り、樹木が咲き始める。

 そして28番目(アスタロト)が木の力を根こそぎ使おうとした所、突如現れた『偽王国の死神』に気絶させられどこかへと魔術で飛ばされて姿を消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ