慈悲伐採9
「やっほー、『呪う猫』ー元気?」
『黒い人』は『呪う猫』に声をかける。相変わらず反応は薄いが、拒絶されている訳ではないので遠慮なく声をかけ続けた。
「そろそろ、終わりが近いよね。そのことはまあどうでも良いのだけれど」
どうやら『呪う猫』は『命の息吹』と一緒に居るようだ。移動中でも、移動した国の中でも一緒。
それは『命の息吹』の親代わりをした身としても、『愛』を推奨する神としても喜ばしい事である。
「『呪う猫』、『命の息吹』とちゃんとお話ししなさいよ」
でも、しなければならない話がある。これは『地の神』としての言葉ではなく、『巨大樹木の発生』を促した身として告げなくてはならない言葉だった。
「奇跡を剥がしたその先の話だよ。このままなら絶対に来る先の話」
それを告げると、『呪う猫』からやや拒否の反応が返ってきた。
「……はなしたくないのは分かるけどさ。はなさなきゃどうにもならない話なんだよ」
やらなければいけない事だ。それは巨大樹木を生やしてしまった、代償の話。
だが、いくら待っても拒否の気配しか感じ取れない。
「……そっか。はなすつもりが無いね、これは」
随分と素直になっちゃったね、と息を吐く。呆れではなく、感心のようなものだ。受容の神でもあるので、呆れることはない。
「それじゃあ『呪う猫』はどうするつもり? 呪いにでもかけるつもり? ふーん。まあ、かけたって良いと思うよ。わたしは受容する。そういう神だから」
ただ、『地の神』が受け入れたってしょうがないのだ。受け入れるだけであって、結果が変わる訳ではないのだから。
「白い人がどう判断するかは、別の話だけれど」
そう『呪う猫』に告げると、少し嫌そうな気配がした。やはり、彼自身もなんだかんだ言って理解しているのだろう。
「うーん、『愛』ねぇ」
うんうん、と頷く。彼が巨大樹木を生やそうとした根本は『彼女のそばにずっと居たい』『彼女に生きてほしい』と願う気持ちが発端だ。これが『愛』でなければ、一体なんだと言うのだろうか。
「愛っていうか執着、執着っていうか呪いっぽいけど」
まあ、呪いは『呪う猫』の専門だし、才能もあるし、どうにか制御ができるようになるだろう。彼自身も自身に掛かっている呪いを上手く利用して生きているようだし。
「まあいいか」
呟くと、『おばあちゃん』から「よくありません」と返事をもらったような気がした。
「まあ、『命の息吹』に怒られる事は間違いないと思うけれど」
怒られるくらいならきっと、彼は気にしないだろう。




