慈悲伐採7
虚数世界で、再び『精霊の偽王国』の者達が『暁の君』による招集を受けた。
そこに集まったのはまだ守護する樹木が破壊されていない数名、樹木は破壊されたもののどうにか捕縛から逃げた者のみだった。
「また一つ、樹木が無くなったようだな」
席に着いた『暁の君』が、ため息混じりに零す。それを受けて一瞬、樹木の守護者達がその身を震わせた。
「樹木の成長は、順調に進んでおりますわ」
他に口を開く者が居なかったので、28番目がそう告げる。それに合わせ、まだ守護する樹木が破壊されていない44番目と1番目が頷いた。
「……そうだな。見たところ、全ての樹木共に順調だろうな」
感情を感じさせない声で『暁の君』に同意され、彼らは再び身を固くする。
「『花』は咲かせられそうか?」
「それは……」
口篭る28番目に一瞬視線を遣り、『暁の君』は小さく息を吐く。
「まあ良い。『樹木の破壊者』共が現れる前になんとかしろ」
「は、」
他の樹木の守護者達が返事をした後、『暁の君』は35番目を連れ帰った『死神』の方へ視線を向けた。
「回収、ご苦労だった」
「別に。ボクは29番目の言いつけを守っているだけだ」
だが『死神』はふい、と素っ気なく顔を逸らしただけだ。
「そうか。あいつの言いつけか」
頷く『暁の君』に、44番目が渋い顔をする。
「我が主。29番目は『樹木の破壊者』が樹木を破壊した後から、連絡を寄越しておりません」
「そうだな。だが、あいつなりに考えがあるのだろう」
「……」
だが『暁の君』は気にしていない様子だ。不満そうにしながらも44番目は口を閉ざした。
「35番目はどうする」
そう、『死神』が回収した35番目を少し動かした途端、35番目が目を覚ます。
「アタシはまだやれるトコだったのにっ!」
「離しなさいよ!」と35番目が暴れるも『死神』はびくともしない。
「……静かにしろ。我らが王の御前だぞ」
「は? なんで44番目なんかが居るのよ?!」
そう叫ぶも、周囲を見回し35番目はここが虚数世界だと理解し動きを止めた。それから『死神』に降ろされ、『暁の君』の方を向いて姿勢を正す。
「『花』を咲かせたのは見事だった」
「は、はいっ!」
「お前にはまだやってもらうことがある。拒否権は無い」
「やる事……?」
戸惑う35番目をそのままに、次に『暁の君』は28番目の方を向いた。
「ところで、『樹木の勇者達』は『教の国』……お前の元に向かっているようだな」
「は。手は打ってあります」
「『手は打ってある』? それが奇襲の事ならば、返り討ちにされていなかったか?」
「ぐ、それは……」
襲わせたことがばれている、と28番目は焦る。
「ボクが見ておく。それで良いだろ」
と『死神』が告げ、「まあ良いだろう」と『暁の君』は許諾した。
だが実際の所、『暁の君』にとっては運命の樹木さえ残ればどうでも良い話だった。




