慈悲伐採6
客車の中は魔女と巨猫、その3に若者達、枢機卿しか居ない。話題はいつのまにか、偽王国の話になっていた。
「彼等は結構、焦ってるんじゃないかな」
とその3は極めて冷静に答える。
「理由は?」
魔術使いの若者は問うた。
「魔女の命を明確に狙っていたからね。樹木の伐採と関係あるでしょ?」
言われて驚き、警戒する若者達。
「大丈夫、この人は安全な人だよ」
と宥める魔女。
「貴女、お人好しね」
魔術使いの若者は呆れる。
「ね、ねこちゃんも怒ってないし。いつでも襲えるだろうけど、何もしてきてないでしょ?」
焦りつつ説明する魔女。
「最初唸られていた気がするけど?」
「うっ」
うろうろと視線を動かしたのち、
「……この人は、大丈夫な人だよ。わたしの友達だから」
魔女は巨猫を撫でながら答えた。
「友達?」
「そうだね。祖国で同じ学校に通ってたから」
聞き返す魔術使いの若者、その3が魔女に同意する。
「同じ学校? 貴女、年齢いくつなのよ」
「えっとー」
「女性の年齢を聞くのは失礼だろ? だから、同じ理由で僕の年齢も聞かないでくれると助かるんだけど」
「……分かったわ」
その3に言われ、不承不承といった様子だったが、魔術使いの若者は引き下がった。
「話は戻るけど、『偽王国』は余裕がないって話だったよね」
その3が話を続ける。確認に周囲は頷いた。
「明確にその子と自分達を『敵』だと認識してる。だから、今まで以上に道中での襲撃などに気を付けないといけない。……まあ今のところ、一人一人はあんまり強くないけど」
基本的に彼らは魔術師なので、魔術さえなんとかなれば勝てるとその3は言う。
「でも。一人の時に集団で襲われると大変だから、あまり一人で動かない方が良いよね」
「班分けしておく?」
その3の言葉を受け、黒髪の若者が周囲へ問いかける。
「わたし、ねこちゃんと一緒!」
「それは決定事項だから改めて決めなくていいの」
巨猫を抱きしめた魔女の主張に、魔術使いの若者は呆れた様子で言い返した。
「バランスを考えて、人数を分けた方が良いと思いますけど」
聖職者の若者は困った様子で周囲を見回す。
「僕は一人でも良いよ」
その3は今まで一人で旅をしていたのだから問題はないと主張した。
「貴方はコイツと一緒が良いでしょ。前の樹木でも一緒だったんだし」
そう言い、魔術使いの若者は黒髪の若者を勧める。
「そうなると、」
聖職者の若者は周囲を見た。
「そっちで一緒になるね」
そう、黒髪の若者が聖職者の若者と魔術使いの若者の方に顔を向ける。
「まあ、余るなら仕方ないわよね」
渋々と言った様子で、魔術使いの若者腕を自身の組んだ。
「今回の『教の国』では、恐らく纏まって活動することになると思いますが」
聖職者の若者は冷静に答える。『教の国』では枢機卿の影響が必要になり、恐らく彼と共に活動するからだ。
「こっちには関係ない話なんでどうでも良いですが、とりあえず無事に出国の際もご利用いただければ言うことは無いですよ。荒野渡りは安全に運んであげますからね」
御者席から隊商長が口を挟む。
「ま、『花の島国』と『月の半島』に行くときはそうも言ってられないと思いますがね」
「どういうこと?」
その後に告げられた隊商長の言葉に、魔女は首を傾げた。
「樹木が生えている残りの国です。船で行くんですよ、そっちは」
隊商長は素直に答える。
「船の手配はしてあげます。最後まで送り届けると契約もしてますんで」




