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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:慈悲

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慈悲伐採5


「この辺りで合流する話になっています」


 荒野のとある地点で、隊商がゆっくりと止まる。「暫く休憩です」と隊商長が告げ、若者達と魔女と巨猫(強制)は客車の外に出る。その3は客車内に残るようだ。


 そこで待つこと数分。


 突如荒野の地面が光り、人が現れた。絹のような髪を持つ、背の高い人物だ。枢機卿らしく、青い装飾品を身に付けている。


「一人ですか」


隊商長は周囲を見回し、怪訝な表情でその者に問うた。


「ええ、護衛は不要ですので。身軽が良いでしょう?」


「それはそうですが……」


 現れた人物は『金の国』の枢機卿だと名乗った。その証拠である物品も見せてくれ、間違いなく待ち合わせの人物であると証明される。

 話によるとその枢機卿は『宗教研究家』の称号の持ち合わせ、『教の国』では研究家として入国できるという。


「その、目隠しについて聞いても良いですか?」


恐る恐る、と聞く黒髪の若者。全身が青や白で統一されている中で、枢機卿の目元だけ真っ黒な布で覆われていたのだ。


「これは()()()()()目を制御しているだけですから、気にすることはないですよ。配慮も不要です」


「……前会った時、あの人に手を引いてもらってなかった?」


いつだったかあまり覚えていないが、魔女はそんな気がする。


「おやおや、小さな淑女(リトル・レディ)。かなり特殊なことをなさっているようですね」

「うわっ」


距離を縮める枢機卿に、巨猫が牽制するかのように唸る。


「ねこちゃんが怒るからあんまり急なことしないでもらえると助かる……んだけど」


魔女は巨猫を抱きしめながら身を引いた。そこで隊商長が咳払いをする。


「何の用事でしたっけ?」


「国の様子を確認したいのです。交友のあった国ですので」


隊商長が問うと、枢機卿は静かに答えた。


「自分と一緒なら、大抵の出来事は免除されるはずです」


枢機卿は『自身が枢機卿である限り』は大きな問題はないはずだと告げる。だが元々がどういう国であろうと、現在は『偽王国』に制圧されているので警戒するに越したことはないだろう。


「客車はこれ以上金はかけられないので、ご了承くださいね」


「質素こそが神の啓示。問題はありません」


「そうですか」


そして客車に乗り込み、その3と会う。


「……おや、神の加護を得た者ですね。珍しい」


「……あんまりその目で見られるのは落ち着かないですね。控えて頂けると助かります」


「失礼」


枢機卿は、その3から視線を外した。



 それから客車が進んだ時、偽王国の者が襲いにくる。


 襲いに来た者達は魔女を明確に狙っていた。だが巨猫の魔術によってあっさりと無力化される。魔術が荒かったので、少し怒っているみたいだったなと、魔女は察した。


「ねこちゃん。わたしはだいじょうぶだよ、ほら」


と巨猫を撫でながら、魔女はとどめを刺そうとする巨猫をたしなめた。隊商長に「使い魔の罪は持ち主に行きますよ」と言われ、巨猫は大人しくなる。


 奇襲の排除をし、客車に戻ったところで枢機卿がなぜか上機嫌そうだった。「どうしたんですか」と魔女が問うと


「ただ、確信が持てただけですよ」


そう、枢機卿は穏やかに答える。


「ああ。やはり神の思召(おぼしめし)、という事だったのですね。安心致しました」


そして枢機卿は巨猫に近付いた。


「……もしや、『強き君』とも何かお話しされてます? ああ、皆まで言わずとも結構です。なるほど、なるほど……」


「ねこちゃん、この人ちょっと変わった人だね?」


魔女が首を傾げるも、無視するように巨猫は丸くなる。だがそれでも枢機卿は上機嫌そうだ。


「本当に、嬉しいのです。神の思召であった事が。神は、我々を見捨てられなかったのだと」


「どうしちゃったの」


魔女は困惑するが、面倒そうに巨猫は尾を少し動かしただけだった。


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