峻厳伐採18
それから、城の地下に閉じ込められていた人達が解放された。処刑されていたと思われていた者達は皆、兵達によって地下に隠されていたのだった。
その中の、35番目に容姿の似た人物が若者達の前に進み出る。
「私は彼女の姉。そして、この国の女王です」
35番目は女王の妹だったらしい。それに驚く若者達。だが、魔女と巨猫は興味はなかった。ただ、道理で早いうちに国を制圧できたのだなと、理由に合点がいったのだ。女王の妹だから、国の情勢や要点を押さえて乗っ取ることも容易だったのだろう。見た目は少女だったが、恐らくそれなりに年齢は高かったのだ。
「彼女は逃げてしまいましたが、いつか絶対に罪を償わせるので、安心してください」
破壊された国を、王女が立て直すと告げる。
「この国も、変わらなければなりません」
×
その後、魔女と若者達は隊商長と呪猫当主と合流する。彼等と騎士団はどうやら無事だったらしいと悟り、魔女と若者達は安堵した。
「あれ、あんたも居たんですか」
その3の姿を見、隊商長はやや目を見張る。
「君も僕のこと、知ってるみたいだね」
「は?」
そうして、その3は自身が記憶喪失である事を話した。
「へぇ、大変ですね。まぁ、ただの記憶喪失なら、『魔女の薬』で治るもんですがね」
言いつつ、隊商長はその3の全体を見る。
「あんた、魂が欠けてますよ」
「ぽっかりと、というか抉られているような形ですね」と、隊商長は痛ましそうに表情を歪めた。
「魂の欠けは魔力の大量摂取と薬の併用をしても、完全に治るとは限りません。……ホント、大変ですね」
「そうなんだね。痛みとかは別にどこにもないんだけど」
はにかむその3をよそに、「……でもこの気配、どこかで……」そう、隊商長は呟く。
×
国を救った英雄として『義の国』の女王から感謝され、特別待遇をしてもらえるらしい。
「特別待遇、と言っても僕達はもう国を出ていくけれどね」
黒髪の若者は困ったように笑う。お土産として、色々な品物を持たされたからだ。また、『いつでも移住して良い』とも言われた。若者達は分からないが、魔女は自国に帰る場所があるのでそれは辞退する。
騎士団の方は一旦、再起動させた総合組合の転移門で自国に戻るらしい。
「ねこちゃんとまた一緒に暮らせるの、楽しみにしてるんだからね」
魔女は巨猫を撫でた。だが、巨猫は目を細めて撫でられているだけだ。
「では、そろそろ出発の時間ですよ」
荷物の詰め込みを終えたらしく、隊商長が声をかける。こうして、魔女と若者達は『義の国』を後にした。
次に向かう国は『教の国』だ。




