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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
一年目

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撤回とも言い難き続行


『……先日、とある男爵の方が不可解なほどに……なんとまあ。アレになったそれが……『薬術の魔女』が原因らしいと、言う話だそうだ』


「然様ですか」


 普段通りに宮廷で仕事を片付けていると、魔術師の男の肩に遣いの式神が現れ告げた。困っているような、困惑しているような声色だ。

 少し心当たりのある話だったが、色々と手を加えておいたので魔術師の男も関与しているとは疑い辛い状況にはなっているはずだ。なので心配はしていない。


「……(とど)()まりは?」


 作業を続けたまま、魔術師の男は式神の向こうの者へ言葉の続きを促す。


『“薬術の魔女の監視はもう少し厳重にしろ”と言う話となった』


「……何も変わらないのでは」


 見ていても、見ていなくとも、薬術の魔女は周囲や環境に関係無くやる時はやる。()()()監視の目をすり抜け、行動を完遂してしまう。監視員の方ではそういう認識になっていた。


『そうだな。とりあえず、来年以降の監視は別の者にさせるつもりだが……』


 少し言い(よど)み、式神の向こうの者は魔術師の男に伺うように言葉をかける。


『お前、薬術の魔女と婚約関係なんだろう? もう少し干渉や交渉などはできないのか』


「……難しい話ですね。私は彼女とはあまり干渉し合わないと約束をしておりますので」


 普段通り、魔術師の男は感情の起伏の薄い声で答えた。ただ、『その話は面倒だ』『無駄な話は不要だろう』と言いた気な感情だけが言葉に乗っている。


『冷たいな』


「そうでしょうか。制度や約束で決まった婚約とは()の様なものだと思いますが」


『まあ良い。婚約者となった関係上、お前が薬術の魔女の監視役を()()()()()()()()()()事は決まった。それで良いか』


「貴方が決めた事に口出しは致しませぬ」


『そうか』


 返答を聞き用事の済んだ式神は燃え上がり、消えた。


×


 『外されるまで監視を続ける』とはつまり、解任の命令が下されるまで彼女の命がある限りは監視を続けろという事だ。

 遠回しに『そのまま結婚し監視を続けろ』と言われたことになる。


「……(……まあ、婚約せずとも監視はできますが……)」


 その状態を少し、考えてみる。


「(…………元婚約者が、別の者と共に居る様子を死ぬまで見守る事に……)」


 それはとても(いや)なことのように思えた。


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