峻厳伐採14
隊商長は、隊商の客車と共に『義の国』の門へとたどり着いていた。
恐らく、魔術を仕掛けた主の対象外だったのだ。
「……ま、無事に戻ってきてくれたら良いんですけどね」
空っぽになってしまった客車を見、呟く。周囲には騎士団の者達もいた。
入国は意外と簡単で、他の国よりやや手続きが面倒だった他に違いはない。聞くと『女王』は入国の方には何も関与しておらず、部下達に任せっきりなのだそうだ。だが、出国について問うとはぐらかされた。だが『絶対に出られない』というわけではなさそうなので、女王の知らない何かしらのルートがある可能性がある。
『義の国』の総合組合は、必要最低限しか設備が整っていない。隊商の輸入品が少しばかり並んでいる程度、転移門も起動していない。
ひとまず、彼らが帰ってくるのを待つしかないだろうと隊商長は溜息を吐いた。
「っていうか、あんたも巻き込まれなかったんですね」
と、隊商長は手元の札を見る。
『其の様だな。まあ、奇跡の力より弱かった、だけの話やもしれんな』
札の中から呪猫当主の声がした。
「そうですか。ってか絶対あの猫も平気だったと思うんですが」
『まあ、今の彼奴は妖精の子の使い魔だからなァ』
×
若者達は女王の城を目指し、森の中を進んでいた。
だが、森の植物達は若者達を邪魔しようとしているかのように、通り道を塞いでしまう。
「どうしよう、また道を塞がれちゃった」
眉尻を下げ、黒髪の若者は周囲を見た。魔術や武器などで植物達をどうにかすることはできる。だがこれから樹木の主である女王と戦うことを考えると、体力を温存していきたかった。
「ちょっと、試してもいい?」
くすんだ金髪の男性が一言断りを入れ、植物達に一歩、近付く。
「何を?」
と黒髪の若者達が首を傾げるのをそのままに、男性は目を閉じ深く息を吸い込んだ。
「そこ、どいて」
目を開き、ゆっくりと植物達に言い聞かせるように告げた。その言葉と共に、樹木はゆっくりと動き出す。
「よかった。予想通りに上手く行った」
「すごい、でもどうやって?」
「簡単なことだよ。魔術は言葉と想像力だ。それと魔力の親和性。それさえ合えば、僕はこの世界では何でもできる……無論、樹木の主との力比べはあるだろうけれど」
その時。
目指していた方向の、魔力の流れが攻撃的なものに変わった。
「何かあったんだ!」
「もしかしてあの子、女王に見つかったんじゃない!?」
「とにかく急ぎましょう!」
若者達は駆け出し、それに合わせてくすんだ金髪の男性も駆けだす。




