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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:峻厳

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峻厳伐採11


 巨大な草花に囲まれた森は、どことなく軽い(ポップな)雰囲気をしている。色合いも明るく、どことなく可愛らしい。そんな森の中を、魔女と巨猫は進む。


「この植物、見たことある?」

『いいえ。奇妙な形状ですねぇ』


立ち止まり、魔女は森の植物を巨猫へ指し示したり手に取ったりした。だが巨猫は知らぬと首を振る。図鑑や事典にも載っていない妙な植物ばかりが生えているようだ。


「あー」

『食べるな小娘』


一度口に含んでみよう、と魔女は手頃な植物を千切り手に取る。それを巨猫が間髪入れずに咎める。


「んー、食べる気が起こんない」

『其れは其れで珍しい』


だが魔女は口に含まず眉尻を下げ、千切った植物を収集瓶に入れた。なんとなく好みではなかったのだ。


総合組合(コレギア)の建物、あると思う?」

『どうでしょうな。公共機関が抑、機能しているか甚だ疑問ですが』


そもそも『国』として機能しているかも怪しい有様だった。そう二人が会話している合間に、パンのような翅の虫が飛んで行く。


「食べ物みたいな虫がいる」

『食べる気は起こりませんがね』


それに、耳をよく澄ませると人のようなさざめきが聞こえる。だが、周囲には人の気配など無い。


「もしかして、植物が喋ってるのかな」


不安そうに魔女は零す。周囲を見回す巨猫は「人の声の様な音を発しているだけで御座います。意味の無い音の塊よ」と、気にした風も見せなかった。


『成程。樹木の影響を『国』にした様子ですね』

「国?」


巨猫の呟きを魔女が拾うと、彼は頷く。


『えぇ。私が『智の国』でやって見せたでしょう、建物と樹木の合一を』

「そういえば」

『其れの規模を、国全体にまで広げた様だ、と言うお話です』

「なるほど」


森の中をあても無く魔女と巨猫は進む。実際のところ、巨猫は魔女について行っているだけだ。


「規模を国にしたとして、何が起こるの?」

『簡単に言えば、支配下に置いた場所の詳細が知られるのです』

「しょうさい」

『はい。詰まる処、私と貴女がこうして話をしていることも、樹木の主である35番目(シトナイ)は知っているのですよ』

「はえー……ってそれ、やばくない?」

『そうですな。あらゆる全てが筒抜けですからね』

「どうすんの?」

『まあ焦らずとも。()()()()()何が在ろうとも、護り抜いて見せますので』

「他の子は」

『知らぬわ。私の関係すべき事では無い』

「もう!」


魔女が怒った様子を見せると、巨猫はなぜか楽しそうに笑う。それにむくれると、より楽しそうな様子を見せる。「悪趣味」と呟くと『今更ですな』と巨猫は鼻を鳴らした。


『例え、此処で貴女が私と会話をして居ても。精霊の言葉等と言う()()()()を知るはずも無いので、貴女がただ使い魔()に話しかけているだけだと認識されている』

「そうなの?」


つまり巨猫と話しているように見える変なやつ、として認識されている。……のだろうか。変人扱いには慣れっこだと魔女は気にしないことにした。


「ところで、どこに向かったらいいと思う?」

『貴女の思う(まま)に。……と、言いたいところですが』


魔女が問えば巨猫は周囲の空気を嗅ぎ、


『魔力の流れの強い方向に35番目(シトナイ)が居ります。共に飛ばされた若者達と合流する事が目標成らば、其方に向かう方が宜しいかと。私自身としてはお勧めは致しませぬが』


そう告げる。確か、若者達とは35番目(シトナイ)を倒すという事で話は進んでいたはずだ。そうなると、35番目(シトナイ)の居場所に向けて進むのが正しいだろう。だが、それを巨猫は勧めたくないらしい。


「なんで?」

35番目(シトナイ)は可成り狂暴な気質で御座います故、貴女の身の安全を保障し兼ねます』

「ふーん。じゃあ、魔力の流れが強い方に行こう」

『何故』

「きみが護ってくれるんでしょ?」

『……はぁ』


こうして、魔女と巨猫は魔力の流れの強い方へと向かうことにした。


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