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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:峻厳

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峻厳伐採7


 虚数世界(奇跡の隙間)の拠点に、『暁の君』によって樹木の守護達が集められた。


「結局、27番目(ベリト)は『花』を咲かせられなかったようですわね」


 開口一番に28番目(アスタロト)はつまらなそうに告げる。


「花を咲かせる一歩手前、という感じではあったが。花を咲かせる()()()()を作ることができなかったようだな」


 そう『暁の君』が告げ、「やはり、過ぎた役だったか」とボソリと零した。それを聞いた直後、他の樹木の守護達は姿勢を正す。このまま、花を咲かせることができなければ、『暁の君』に見限られてしまうのでは、と不安を覚えたのだ。

 せっかく樹木の花まで咲かせた15番目(ファライー)をどうとも思っていない風に切り捨てた『暁の君』だ。容易に想像ができた。


「お前達はどうだ?」


と問う『暁の君』に


「順調だ」

「『願い』の収集は順調です、我が主」

「同じくですわ」

「アタシのトコも順調よ」


樹木の守護達は内心の焦りを表出させずに答える。一瞬、『暁の君』が周囲に視線を巡らせたが何も言わなかった。


「きっかけさえあれば、咲くわ」


自信たっぷりに35番目(シトナイ)は言う。事実、『願い』の集まりは順調だった。


「だって、相当な魔力量が集まっているんだもの」


だから、あとはきっかけさえあれば花は咲く。そのはずなのだが、きっかけが分からない。

 だが魔力が集まっているのは当然の話だ。以前花を咲かせた『栄光』だけでなく、他の樹木の吸った魔力や願いが残った樹木に分配されているのだから。


「……『樹木の破壊者』は、破壊した樹木に近い順で移動しているな」


 地図を見下ろし、『暁の君』は呟く。


「次って『義の国』か『教の国』じゃない?」


そう35番目(シトナイ)は零した。それに合わせて他の樹木の守護達も地図に視線を向ける。


「どちらに行くかしら」

「前回は『愛の国』より先に『智の国』……東側に向かっていったか」


顎に手を遣った28番目(アスタロト)に、44番目(フォカロル)が反応した。


「それって15番目(ファライー)のやつが招いたからじゃなかったっけ?」


35番目(シトナイ)が返すと


「……『義の国』かもしれんな」


と『暁の君』。


「宜しければ、理由を教えて頂けますか我が主」


44番目(フォカロル)が聞き返すと


「……そういう決まりがある」


『暁の君』は静かに返した。


「決まり?」


35番目(シトナイ)を始め、他の樹木の守護者達は怪訝な顔をする。


「正しくは、運命、知恵、理解、慈悲、峻厳、壮麗、勝利、栄光、基礎、王国――そのような順番だが。……逆に上ってきているのだろう」


そう言ったきり、『暁の君』は口を閉した。


「ふぅん? とにかく、次はアタシの番ってワケ?」


「負けるわけない。アタシは最強なんだから」と強気に35番目(シトナイ)は腕を組む。

 他の樹木の守護達は『自分の元に来たらどう対処してやろう』と考えを巡らせているようだ。


『声のみで失礼』


 突如、29番目(フォラス)が連絡を寄越した。


「お前! ……今まで連絡を寄越さず、何をしていた?」


と『暁の君』は顔をあげる。動揺を見せないよう、慎重に。


『頼まれていた『殻』の回収を行っていた次第に御座います』


いけしゃあしゃあと述べるその声はいつも通りだった。その様子に数名の樹木の守護は表情を歪ませる。


御許(みもと)候は(そうらわ)ばやとは思うて居りますが、何分(なにぶん)手の離せぬ状況が在りまして――』


「御託は良い。戻ってこれるんだな?」


『えぇ。無論』


『暁の君』の問いに、29番目(フォラス)は端的に返した。


「ならば言うことはない。必ず、戻ってくるならな」


『寛大な御心、感謝致します』


始めと同じように急に連絡が途絶える。だが、『暁の君』はひとまず安心するのだった。


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