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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:壮麗

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撤退


 「やった!」と喜ぶ黒髪の若者に対し、「馬鹿なっ?! 私には樹木の守りが有るんだぞ?!」と27番目(ベリト)は動揺する。

 聖職者の若者を払い除け、27番目(ベリト)は自身の口元を拭った。そして背に刺さった短剣を引き抜くと、魔道具を使い急いで樹木の力を使い傷を塞いだ。


「……私は、教皇の息子だ。樹木なんぞの守りごとき、破れない訳がないっ!」


払い除けられた聖職者の若者は立ち上がり、27番目(ベリト)を睨み付ける。


「……息子がいたのか? チッ、調べが甘かったか」


「父さんの居場所を吐いて頂きましょうか!」


 「手伝ってください!」と聖職者の若者が他の若者達に告げ、「うん!」「もちろんよ!」と聖職者の若者と27番目(ベリト)の戦いを黒髪の若者と魔術使いの若者が援護した。


 魔女も若者達が有利になるように協力は惜しまない。ただ、巨猫はただ様子見をしているだけの様子だった。魔女の方へ飛んできた攻撃などの衝撃は防いでくれるがそれだけだ。


 そうしている合間に、魔女は視界の端できらきらと煌めくものを見つけた。


「あれ、樹木の『実』かも!」


「うん、行ってきて!」


魔女が声を上げると、黒髪の若者が返事をする。


「させるか!」


煌めくものの方へ駆けだした魔女に、27番目(ベリト)が妨害を仕かけた。だが、それを巨猫が邪魔をする。


「な……使い魔か。……お前、どこかで感じたことのある気配だな」


 27番目(ベリト)が巨猫を睨むが、巨猫は興味なさそうにただ見つめ返した。


×


「わぁ……綺麗」


 最上階の森の奥、開けたそこには黄色に輝く実があった。

 どうやら色は樹木の葉に似ているようだ。

 黄色で、不思議な煌めきを持っている。

 木の実は遥か高い場所にあった。


 そのはずなのに、気付けば手の届く位置にある。


 思わず、魔女はそれに手を伸ばした。


 ぷち。


 手のひらの上で木の実の千切れる音がして、手元に木の実のずっしりとした重みがかかる。

 その瞬間、木の実が消えた。


「わ、」


樹木が震え出す。

 魔女は急いで若者達の元に駆け出した。


×


「木の実、回収できたよ!」


 若者達に呼びかけると、若者達も27番目(ベリト)を拘束しているところだった。


「樹木に繋がってるらしい魔道具も破壊したから、逃げられないよ!」


そう黒髪の若者が告げ、27番目(ベリト)は忌々しそうに顔を逸らす。「この拘束じゃ普通に逃げられるっての……誰かが魔術の発動を邪魔してる……」ふと27番目(ベリト)が巨猫を見ると、巨猫がニタリと目を細めた。「……!」


「じゃあ、樹木が完全に壊れる前に脱出しよう!」


そうして魔道具を取り出す。だが、信徒達は先の戦いや色々で意気消沈していて、脱出を拒否した。


「どうしよう? この魔道具、移動人数に制限があるんだけど……」


若者達と魔女、巨猫、27番目(ベリト)に信徒。全員を移動させるには力が足りないらしい。だが、


「ねこちゃんならできるでしょ?」


と、魔女は巨猫を見つめた。「そうなの?」と驚く若者達をそのままに


「……」


巨猫は『仕方あるまい』と言いたげに鼻を鳴らす。


 直後、周囲に巨大な魔術陣が現れた。

 刹那に全員が樹木の外に放り出される。


「拘束されてたんじゃ……」

「それより! 使い魔が高度な転移魔術を、それにこんな大規模なんて」


困惑する若者達をよそに、魔女は「さすがねこちゃん!」と巨猫をわしわしと撫でた。巨猫はされるがままだ。


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