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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:壮麗

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本当の正体


「お前達が、『暁の君』が仰っていた『樹木の破壊者』か」


 聖職者の若者と共に居た者は、子供だった。


「私が聖十字教の教王だ」


子供の姿をしているが、その表情は子供らしさが一辺も無く、まるで威厳に満ちた王のようだ。


「そして」


教王は若者達を睨み、表情を歪める。


「私は壮麗の大樹の守護(ベルフェゴール)の役を司る、『精霊の偽王国』の27番目(ベリト)


その言葉に「やっぱり、偽王国と繋がりがあったんだね」と黒髪の若者は表情を険しくした。魔術師の若者も杖を構える。


「う、嘘だ!」


共に居た信徒が声を上げた。無理もない話だ。初めて見た子供が自ら教王を名乗り、偽王国との関わりを口にしたのだから。


「私が教王でないというつもりか?」


「そ、それは……」


27番目(ベリト)の言葉に信徒は狼狽(うろた)える。この巨大樹木は聖十字教のものであり、その最奥に居られるのは教王か、教王に認められた者や招かれた者でしかありえないはずだったからだ。


「教王様、嘘ですよね? あの(おぞ)ましい集団の一員であるなど」


「私の所属する、『精霊の偽王国』を愚弄するか」


その声には僅かばかりに苛立ちが含まれていた。教王の27番目(ベリト)は信徒達自身は取るに足らない存在としてどうでも良い様子だが、精霊の偽王国を貶める発言は気に入らなかったようだ。それで更に偽王国の者である確信が高まっていく。


「教王様、私達を騙していたのですか?!」


「騙す? 何をおかしな事を。何もかも、勝手にお前達がやったことじゃないか。私を信じることも、私の指示に従ったことも」


 その言葉が止めだったようで、信徒は力無く膝を突き地面に座り込んでしまった。


「自分が信じていたものの根本がおかしくなってしまったなら、大変だよね」


黒髪の若者は同情の視線を信徒に向ける。魔女だって信徒に少しは同情していた。ただ、やっていた行動が正しかったかは別の話だ。巨猫に視線を向けると『ほら言ったでしょう』とばかりに心底楽しそうだったので、脇腹を小突いた。


「さぁ。無駄話も済んだことだし、本題と行きましょうか。『樹木の破壊者』達」


27番目(ベリト)は若者達と魔女に視線を向ける。


「あなた達。なぜ樹木を破壊する?」


「樹木は私の願いを叶えてくれる上に、民草に恵みをもたらす。わざわざ伐採する必要性など無い」と、27番目(ベリト)は若者達に問いかけた。


「馬鹿なことを言うな! 樹木の中に囚われた人達を、僕は救いたいんだ! お前みたいな自分のことしか考えていない奴には一生分からないだろうね!」


黒髪の若者は啖呵を切る。


「樹木の中の人? ああ、()()()()()達のことか」


「……死に損ない?」


27番目(ベリト)の言葉を黒髪の若者は聞き返した。それに気を良くしたのか、27番目(ベリト)は更に語り出す。


「そうだ。樹木の中の者共は死に損ない。樹木の生えた瞬間に死ぬ筈だった者、樹木の生えたあとの世界で死ぬ筈だった者。それらを、なぜか樹木は()()している訳だ」


死に損ないを助けるために破壊する意味などあるものか、と27番目(ベリト)は嗤った。


「そっか」


黒髪の若者は溜息を吐く。


()()()()()。……樹木を破壊する理由に自信が持てた」


その目には、より強い輝きが灯っていた。


「……なんだと」


虚を突かれたようで、27番目(ベリト)は不快さに表情を歪めたその時。身体に衝撃が走り、血を吐く。


「何っ?!」


動揺した27番目(ベリト)が首だけで振り返ると、


「ずっと、この機会を待っていた!」


聖職者の若者が、不敵に笑っていた。27番目(ベリト)の背後から刃を差し込み、傷を負わせたのだ。


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