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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:壮麗

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裏切り者


「じゃあ、行ってくるねー」


 今日も若者達は国の噂を聞きに出かけて行った。


 巨猫の手術から数日経ち、怪我も程よく治ったのでリハビリを兼ねて魔女と巨猫は街歩きをする。さすがに元の姿だと大き過ぎたので、大型犬程度の大きさにまで縮んで貰った。


「一緒にお出かけするの、久しぶりだね」

「チッ。此の首輪、身体の大きさに合わせて変化致しますね」

「外しちゃダメだよ。今の君の安全を守るためのものなんだから」

「理解しておりますとも。確認です」


 巨猫(使い魔)を連れているので、入れる場所には制限がかかるようだった。食事の場所や清潔感が必要な場所には入れないらしい。聖堂も入れる場所とそうでない場所がある。ペット連れのようなものか。


 街中ではなく人気(ひとけ)のない場所に移動した。恐らく若者達は表側で情報収集しているだろうと考えたからだ。巨猫が提案したからでもある。

 そして裏路地をしばらく歩いていると。


「嘘じゃねぇって。教王様が黒い服の奴らとつるんでいるのを見たってやつが……」


そんな声が聞こえてきた。どうやら、教王と偽王国が結びついているらしい噂のようだ。


「実際どうなの、ねこちゃん」

「そういえば。『樹木の守護』の中に、何処ぞの宗教の教王を名乗る者が居りましたな。確か、聖十字(なにがし)だとか……本物かは兎も角」

「それ本当だったらやばいじゃん」

「はは。今更ですなァ」


 顔をしかめる魔女に対し、彼は楽しそうに笑う。本当に趣味が悪い。

 話す声をしばらく聞いていると、どうやら『美の国』全体が聖十字教に侵されているらしいと知る。簡単に言うと、国全体が聖十字教の言うことを聞いている様な状態だ。


 それから。

 しばらく情報収集で路地を歩いていると、突如、「巨大な黒猫の使い魔を連れている! 『魔女』だ!」と声が聞こえ、武器を持った人達に襲われる。「『魔女』が居たぞ!」


「なにこれ」

「ふむ。是が噂に聞く『魔女狩り』ですか」


 魔女が口をへの字になった。結界で魔女を護りながら彼は呟く。『美の国』では聖十字教に背く者を『魔女』とし、断罪するのが流行っているらしいと彼が教えてくれた。


「ありがとう!」

「此の国では私は使()()()の様で御座います(ゆえ)


 守ってくれた彼にお礼を告げる。彼は魔女を護る様に前に立ち、低く唸る。


「尻尾、三つあるんだ」

「猫魈ですので」


 ふと、彼が三尾だと気付いた。短く返される言葉に「(猫魈って尻尾三つあるんだ)」と感心する。


 それから襲ってきた者達を打ちのめし、色々な情報を聞き出した。


 簡単に言うと、今の聖十字教の教王がこの国をおかしくしたらしい。元からいた『聖十字教』の信徒を暴走させ、この国の統治者である本物の教皇をどこかに隠したのだ。


 樹木は今の聖十字教の教王がとても大事にしているらしく、信徒以外が近付くのは難しいのだとか。


 宿に戻り情報を出し合うと、若者達も似たような情報を集めていた。


 次はどうやって樹木に入るか、と言う話になる。「次の目標はどうやって樹木に入るか探らなきゃだね」と黒髪の若者が告げた。


 それからまた別の日。

 情報集めで魔女と巨猫が街を歩いていると、親しげに話しかけられた。そして「樹木を近くで見てみたい」と言う話をした時に、特別にひいきして見せてくれるという。

 近付くだけなら良いか、と魔女と巨猫はその人の案内について行った。


「本当は、聖十字教を疎ましく思っているんだ」


 そう、ぽつりと案内人は零す。


「あんた、精霊を引き連れているじゃないか。だから、聖十字教とは縁遠い人かと思って」


 それを、巨猫はじっとりとした目で見ていた。


 そして。連れて行かれた先にはたくさんの聖十字教人が居る。「不届者がいました」と案内人が告げ、売られたのだと魔女は知った。


 魔女は手錠をされ、巨猫は口輪を付けられる。そして、古い聖堂の狭い部屋に押し込められた。


「わぁ、やばいかっこうだね」

「暫く人には戻れませんな」


魔女は巨猫を見て軽口を叩く。

 普通の人ならかなりピンチなのだが、全身放出器官の二人にはまったくもって余裕な状況なのだった。通常の人は手のひらや手首周辺までしか魔力の放出器官がない。故に手を塞がれると魔術が使えず身動きが取れなくなる。

 だが全身が放出器官だと()()()()()()魔力が放出できる。そして両手が拘束されていても、詠唱封じの魔術式がかけられていても喉周辺の魔力量が十分にあるため魔術(や魔法)が使えるのだ。


 それから、黒髪の若者と魔術使いの若者も一緒に捕まった様で合流する。魔女と同様に腕を拘束され、詠唱封じの魔術式が施されていた。


「どうしたの? それと、もう一人の子は?」と聞くと「売られたのよ、一緒にいたあいつに」と魔術使いの若者が苛立った様子で答える。


「あいつ、聖十字教の信徒だったの」


×首輪について×

こちらの世界観的に、首輪(ネックレスでない)は、子供用の魔力制御装置か隷属の証となります。


 子供用の魔力制御装置は主に柔らかい革製で、首の後ろに魔力を吸収したり調整を行ったりする装置が付いています。付ける年齢は一般的には初等部に入る前まで。魔力の制御を行うオムツみたいなものです。


 隷属の首輪は必ず金属製で、首の後ろ側に封じる文言などが刻まれています。前側にはおしゃれだったり補助装置だったりと装飾や魔石などを付けます。


×詠唱封じの魔術式について×

 詠唱封じの魔術式は主に喉元に仕掛けられ、体内から口の方面に流れる魔力や吐息に混ざる魔力の量を著しく下げ詠唱による指示を通しにくくする術式。


 逆を返せば喉周辺あるいは声の届く範囲に十分な魔力があれば魔術を施行できるという(力技の)裏技がある。


 魔女と彼は全身放出器官(=喉周辺にも魔力の放出器官がある)なので封じられていないも同然と言うことに。


 ちなみに長時間詠唱封じを施すと目に行く魔力量が低下し魔眼や心眼などは力を失うことがある。なので詠唱封じの長時間使用は推奨されない。


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