爆発した。
『美の国』は、清潔そうな国だった。
とにかく、なんとなく空気が澄んでいるのだ。
「すごい。なんだか清々しいね」
黒髪の若者は深呼吸をしている。
特徴として白い建物が多く、見えるところ全てがどこか教会や聖堂の様な雰囲気を持っていた。目につく場所に十字教の集会所らしきものがいくつか見える。
気候はカラッとしており、湿度があまり感じられない。
総合組合の影響はあまり強くない様で、冒険者らしき姿は少なかった。総合組合の建物はそれなりに大きかったが、利用者は今までの国と比べても控えめだ。
入国に関しては「魔獣に襲われていたので助けた」と言った旨を話し、それが嘘じゃないと判断されたため入国できたのだった。
そして、総合組合の受付で宿探しを始めた時。
「お嬢ちゃん、その使い魔は穢れているからなんとかしなきゃだよ」
と言われる。
荒野の途中で拾った巨猫は、どうにか歩けるまで回復していた。そして、魔女の側を離れない。
「ねこちゃんはばっちくないもん!」
頬を膨らませて魔女は抗議した。「まぁまぁ、落ち着いて」と若者達がとりなす。
それでも怒りは治らない様で、魔女は巨猫に浄化の魔術をかけた。「ほら!」一瞬、魔術式をかけた瞬間に巨猫は顔をしかめたものの、興味なさ気に座っている。
「いや、そう言うのじゃなくて精霊っぽいんだよね」
「むーん」
精霊っぽいのではなくほぼ精霊なのだが今は関係ない。とにかく穢れの気配が凄まじいので首輪と対になる魔道具を用意すべき、という話だった。
「精霊の使役用の魔道具屋がそこにあるから、紹介状書いとくね」
と親切にも紹介状を書いてもらう。
若者達は情報集めを兼ねて簡易的なクエストを受けるようだ。
巨猫を連れて、魔女は紹介された魔道具の店に移動する。
「おやまぁ、すごいもん連れてるね」
と驚かれた。そして「使役用の魔道具が欲しいのかい」と店主らしき人物に問われる。
「なんとかしなきゃいけないらしくて。でもなにが必要かは分からないです」
そう、魔女は店主に答えた。
「そうか。見たところ使い魔契約を結んだばかりだろう? 使い魔に首輪を着けるだけじゃあ契約はまだ途中なんだ。契約者が使い魔を使役するための指示用の魔道具が必要でね」
店主は丁寧に教えてくれた。
「指示用の魔道具……?」
「お嬢ちゃん、ちなみに首輪にはなにを使ったんだい?」
問われたそれに「これだよ」と首輪の余った材料を見せる。「良いもの持ってるじゃないか」と店主は感心した。
「良ければそれで魔道具を作ってあげようか。まあ指輪やネックレスのようなものしか作れないけれども」
「じゃあ、お願いします」
せっかくなのでその好意に甘えることにする。形状はネックレスだ。指輪や指揮棒だと失くす恐れがある(というか失くす自信しかなかった)ので。
魔道具を作ってもらい、巨猫の首輪にかかっている魔術式の一部を転写する。そして首輪とネックレスとの繋がりを強固にして指示用の魔道具に仕立て上げた。
「これは応急処置みたいなものだから、後で裁定者に設定し直して貰いなよ。できれば契約した時と同じ奴に」
と言われたのだった。これで完全に主従関係が結ばれたことになる。ちら、と巨猫を見るが特に不機嫌そうではなかった。
「(……むしろ、ちょっと上機嫌そうな気がする)」
ちなみに隊商長の元に向かって指示用の道具として調整してもらう。同じ様に、呪猫当主にも少し文言を刻んでもらった。
そうして、ようやく魔女は総合組合で宿が取れる様になったのだ。場所は若者達と同じ場所だが、やや広めの部屋を取る。
「これでようやくねこちゃんの怪我治せるね」
と魔女は一安心した。
魔女が「ねこちゃん治すから、個室にさせて」と願い出ると、若者達は了承したので問題はない。
「じゃあねー」
と、若者達と別れて魔女は巨猫と共に部屋に引っ込む。
「ふー。これでやっと二人きりになれたね、ねこちゃん」
そして、魔女は巨猫と向き合う。
「で。誰よ、その魔力!」




