適材適所
緑柱石で煌めく王宮内は、とても広い。あらゆるところに緑に輝く植物が生えているが、その植物の正体が分からなかった。
「(……強いて言えば、樹木の葉に似てるんだけど)」
そういえば、と前回の樹木について思い出す。確か、建物と一体化しているのだったか。
「(…………)」
魔女は眉間にしわを寄せる。
×
若者達は意外とあっさり、色々な審査を合格していた。合格した若者達は、次の会場となる場所へと進んでゆく。専属のスタイリストとして参加している魔女も、それに合わせてついて行った。
「なんだか思いの外簡単だね」
黒髪の若者は呑気にそんな事を告げる。
「……逆に怪しいって思わないの?」
「自分達全員が勝ち残るなんて、どう考えてもおかしい気がします」
魔術使いの若者と聖職者の若者は警戒していた。だが、美人だと持て囃されること自体には悪い気はしていないようだった。
「食べるものとか色々と気を付けてね」
と魔女は若者達に声をかける。コンテストから脱落させようとして食事や色々に妙な事をされる可能性を考えたからだ。
「大丈夫だよ。いざとなったら君が助けてくれるでしょ?」
黒髪の若者は魔女に笑顔を向け、魔女は「仕方がないなぁ」と少し照れる。信頼されて嬉しくない訳がない。
それから叫び声が聞こえた。
急いで声の元に駆け着けると、魔獣が居た。
「お城の中なのに魔獣が!」
黒髪の若者は驚くが、武器を構える。魔術使いの若者や聖職者の若者も武器を構えた。
「コンドルだ!」「瘤禿鷹だ!」
黒髪の若者と魔女は叫んだ。
現れた魔獣は、頭部の禿げた猛禽類のような姿をしている。魔獣は複数体居り、美しく着飾った者達に襲い掛かっていた。それを若者達が追い払ってゆく。
怪我をした者達を魔女と聖職者の若者が治療した。
「もしかして、敗退した人達を襲おうとしてる?」
魔女は首を傾げる。
怪我をしている者は皆、美しく着飾っていた。コンテスト会場で見かけた顔の者も居る。だが、使用人らしき者達を素通りしてゆくのだ。
「とにかく、みんなを守らなきゃ!」
黒髪の若者は叫ぶ。
だが、魔獣は次から次へと大量に現れた。そして、助けるのが一足遅かった人が、モザイクのように掠れて消えていく。
そこで「魔獣に襲われた人は行方不明になる」という話を思い出す魔女と若者達。
「助けられなかった人は仕方ないわ」
と魔術使いの若者が告げていたが、悔しそうだった。若者達も魔女も、暗い顔をする。
ひとまず、助けた人達は脱出用の魔術式を用いて樹木の外に逃がした。
「逃した人達が大変な目に遭わないと良いんだけど……」
魔女は少し不安だった。だってコンテストを開催している大元はこの国の王妃が原因らしいからだ。
だが国民達の様子を見る限りは(王宮から逃げ出した人も美人だし)、酷い目には遭わないだろう。
「(……あの人みたいに広範囲で魔術が使えたら良かったのに)」
そう思えど、魔術の使用範囲には個人差があった。伴侶は宮廷魔術師だからか、かなりの広範囲を扱えるが魔女はあまり広くは使えない。
自身の至らなさを歯痒く思った。
宮廷魔術師の魔術施行範囲は心臓から半径50m程度。
一般的な魔術師は半径20m程度、
魔術が使える人は半径5m程度。
一般人は1m圏内でしか扱えません。
悪魔の施行範囲は精度を問わなければ200m程度、兄上は王都と呪猫を覆う程度。兄上のチートっぷりが酷い。
施行範囲は魔力量に応じて拡がるので室長レベルの宮廷魔術師や高齢の宮廷魔術師(100歳〜150歳程度)なら悪魔と同程度は扱えます。
悪魔はまだまだ成長中。兄上を超えたいので。
宮廷魔術師の雑な設定は↓
最強魔術師作りたい企画(https://uranai.nosv.org/u.php/novel/Pumpkincro43/)
に少しだけ書いてあります(必読ではない)。
些か世界観が違う。(ある運命の話シリーズの世界観)




