賛美
それから長い準備期間を経て、コンテストが開催された。コンテストの会場はなんと王宮だった。
「(……『樹木の主』が王妃なら、当然の話なのかな)」
魔女は思考する。自国の場合、宮廷は宮廷魔術師や宮廷錬金術師の構築した魔術式や魔導機に護られ、有象無象が容易に出入り出来る場所は少なかった。
魔女が庭や植物園等に足を運ぶ時も伴侶や巻き毛の子経由で回覧チケットを入手して、それでも限られた場所しか回れなかったのだ。
だから、コンテストの会場として様々な場所への出入りを許される現状がとても不思議だった。
ところどころに緑に輝く葉を持つ木や植物が生えており、建物の材質は石のようだがところどころに緑柱石のようなものが埋め込まれていて煌めく。
「(色々と寛容、ってことかなぁ?)」
若者達は興味深そうに城のあちこちを見学する。魔女もそれに合わせて付いて回るが、あまり好みではなかったのでやや気持ちは下がり気味だった。
「(あの人と一緒だったら、もっと楽しかったかな……)」
思考してみるが、彼ならきっと『此処の警備が甘い』だとか『死角が多い上に壁が薄く諜報し易い。他、魔術式に耐性のない材質。阿保が設計したのですかね』とか言いそうだなと思い、口をきゅっと結ぶ。概ね同意してしまいそうなので、(余計なことを言わないように)口を結んだ。
自国は魔術や錬金術が発展している上に、城の改修を幾度か行っているらしい。だがこの城は多分歴史的な建造物だ。魔術も発展途上の頃に築かれただろうから、防御が甘いのは仕方ない事なのだ多分。
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コンテストは数日間かけて行われ、若者達は不思議と簡単にコンテストを勝ち進んでいく。コンテストは一日ごとにテーマが一つ決められており、それに合わせて服装やデザインなどを変えていった。そして、一定の基準未満だった者を振り落として行くのだ。
美人コンテストなので性別は関係ないようだが、審査員の好みが反映されるらしい(艶かしい美人が有利らしい)。勝ち残った人達を見るが、なぜか自分達も勝ち進めている事が不思議だった。
「みんな、綺麗だよ」
飾り立てた若者達を見、魔女は声をかける。それは心の底からの言葉だった。
若者達は十分に健康的でしなやかな身体をしている。荒野の中を渡った後だからやや髪質に傷みが生じているところもあるが、魔法薬で整えればあっという間に艶やかになった。
特に、黒髪の若者の髪色は珍しく、星空のように煌めくのでより目を引く。
若者達の世話をしながら、ふと娘達を飾りつけたことを思い出した。
何かのパーティだったか忘れてしまったが。
長女も次女も素材は父親譲りで美しかった。だというのにあまり煌びやかなものは好まない。それでも親の欲目を抜きにしても美しい娘達だ。
彼女達はもう大人になってしまったが、そんな懐かしさに少し泣きそうになった。
今回出てきた魔女の伴侶は魔女脳内での再生なので語彙力が魔女並でしかない。
もしかするともっと辛辣な事を言うかもしれない。




