勝利伐採7
虚数世界にある拠点に、樹木の守護達が集められた。
集められた理由は勿論、樹木が伐採されたことについてだった。
だが、他の樹木の守護達はやや苛ついていた。
なぜなら軽んじていた15番目が真っ先に樹木の花を咲かせて魅せたからだ。
聞くと樹木が発生した時から力を蓄えていたらしいので、かなりの年月をかけたと想像できる。
今から始めて、『暁の君』を満足させられる結果を出せるのだろうかと、樹木の守護達は焦っていたのだ。
お気に入りだった15番目を失ったばかりだというのに『暁の君』は落ち着いていた。
「15番目が居なくなる程度の事は想定済みだ。お前達、ちゃんとやっているだろうな」
樹木の守護達は、表には出さないが驚く。侮っていた訳ではないが、何かしらの反応はあると思っていたからだ。
それと同時に『暁の君』が何を考えているのかが分からなくなる。居なくなることが想定済みという事は居なくなる前提で計画が進んでいる他に理由がないからだ。
「だがお前達、気を抜くなよ。あいつとは違いお前達には期待しているのだからな」
言われて、背筋が伸びる。
実は樹木の守護者達は、あのいけ好かない助言者には一応感謝をしていたのだ。なぜなら、樹木を育てる方法を教えてくれたからだ。どうやって『夢』を集め『願い』を育てるのか。
『夢』とはつまりは願望なのだ。あれが欲しいとかこれをやりたいだとか、そういう欲望。
特殊な魔道具か何か仕掛けを作成する必要はあるだろうが、要は民草の欲望を何らかの形で集めてそのエネルギーを樹木に与えればよい。
会議を進めながら、各樹木の守護者達は『夢』を集める計画を立てる。
×
事実、『暁の君』は内心で焦っていた。
「(『花が咲いた後に樹木は喪われる』とは聞いていたが、お前が帰ってこないのは聞いてないぞ!?)」
なぜ帰って来ないかは知らないが、繋がりが途絶えたことだけは分かる。周囲にもさりげなく問いかけたが、周囲も助言者の動向を確認できないそうだ。以前の様に、逃げられたとは考えていない。
ひとまずの計画は樹木を育て、運命の樹木のみを残せば良いのだ。つまり、他の樹木は剪定される。問題はその先だ。
「(あいつは『樹木に神を降ろす』と言っていたが……具体的には何をするんだ)」
それとも神を降ろす頃には戻ってくるとでもいうのか。
「(……兎角、樹木は育てさせなければ)」
樹木が切り倒されると、切り倒された樹木が蓄えていた魔力を他の樹木に分配されるらしい。
花まで咲かせた栄光の樹木が伐採されて以降、樹木が大いに成長したからだ。他の樹木の守護達もやがて気付くだろう。
ちょっと夢を与えればすぐに花を咲かせられる状態になっているのだ。
ただ、夢を与えるのが難しいだけで。
『暁の君』はあえて冷徹な態度を取ることで、周囲に威圧を与える。
動揺は悟らせず、余裕を見せる。
そうして、今回の会議はどうにか乗り切ったのだった。




