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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:栄光

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樹木内部


 建物にはいたるところに樹木が生えている。


 通常の植物の代わりに橙色の葉の生えた植物が中庭に生えていたり、花瓶や生け花のような飾りとして在ったりした。建物の木材の個所はよく見るとオパールのような透明感と遊色を内包している。


「建物だけど、もしかして樹木なのかな」


周囲を見回し、黒髪の若者は呟いた。「どういうこと」と魔術使いの若者が問うと、


「だって、他の今まで見た樹木と似たような特徴がそこら中にある」


と答える。「言われてみればそうね」と魔術使いの若者は頷いた。樹木の中に生えているような植物の群生や鉱物の発生がそこらじゅうにあるのだ。

 それに、この建物の中には樹木内で見かけた遺跡のような装飾が、華美でない程度にばら撒かれている。樹木内部で見かけた装飾は(黒髪の若者の知識で言えばローマやギリシャの)昔の建築のようなものだが、この樹木内部では幾分か細部の形状が変わっていた。


「呪猫や薬猿で見かける装飾に近いかな」


と軍医中将は周囲を見回して呟く。


「樹木の内部によく似ている、と言うことは、終盤に近づくとあの門も見えてくるということでしょうか?」


聖職者の若者は呟き、それに黒髪の若者と魔術使いの若者も考え込んだ。


「……もしかして、きみ達。他の樹木にも入ったの?」


 軍医中将が興味深そうに問いかける。


「はい。『地の国』の樹木と『霊の国』の樹木に」


黒髪の若者が肯定すると、軍医中将は「伐採された樹木に入ったことがあるんだね」と軽く目を見開いた。


「いいね。わたしは入ったことがないから。それにその二つの樹木はもうなくなってしまった訳だし、もう入ることは叶わない。話によると、中は独特な生態系になっているらしいから、気になっていたんだよね」


 軍医中将はどうやら樹木の中の生態系が気になるらしい。さすが『薬術の魔女』だな、と若者達は感心する。植物に関連する研究を山ほど行っているらしいと噂で聞いたことがあったからだ。


「良かったらあとで教えますよ」


「うん。そうしてもらえると助かるよ」


×


 建物はそう簡単に奥へは行かせないつもりなのか、様々な仕掛けが施されていた。だが、軍医中将はあっさりと解いてみせる。そして罠の避け方を若者達にも伝えた。


「ああ、やっぱりよく見たことのある仕掛けだ」


呟き、罠の解除をしてゆく。

 他にも精霊や顔が札で覆われた人型の敵も現れるが、あっさりと対処して行った。


「見たことあるってどういうことですか」と黒髪の若者が問いかけると


「よく知ってるよ。でもこれ、わざとやってるのかな……」


と不思議そうに、やや上の空の様子で答える。


 しばらく進むと、やはり大きな門のようなものが姿を表した。


「これがきみ達の言っていた『門』か。趣味が悪い。あの人らしくない装飾だから、元からある要素なんだろうね」


 そうして門を眺めていると、ぽん、と軽い音を立てて霞色のデフォルメチックな猫が出てくる。若者の持っていた札から呪猫当主が出てきたのだ。


『此処が彼奴の樹木か。随分と大きく育っているようだ』


と、のんびりした様子で周囲を見回す。


「やっぱり、出てきましたね」と軍医中将は呪猫当主を見()る。


「知ってる気配があったからね。気にしなくていいよ」


と軽い調子で軍医中将は若者達に伝える。


『魔力の気配が濃い。此の樹木、時期に花が咲くな』


「花?」


聞き返す軍医中将に呪猫当主は頷いた。


『そうだ。花が咲けばより厄介な事に成る。伐採を急ぐのだよ』


そう告げ、『ややこしくなるので一旦私は引こう』と呪猫当主は姿を消す。


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