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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:栄光

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栄光伐採5


「着きました。此処で(しばら)く生活して頂きますからね」


 拠点の最奥らしき部屋に着くと、床に降ろされる。解放されたのだ。

 最奥の部屋は(すだれ)だけでなく、壁や戸でも囲われていた。

 周囲の魔力の気配だけで、樹木に大分近い場所だと分かる。本当に深い場所に来てしまったようだ。


此処(ここ)は私の結界の中です。大半の魔術は効力を失いますので、連絡等出来ませんよ」


周囲を見回す魔女に、偽王国の騎士は告げる。そして魔女の服に手を伸ばし、魔女の服を剥ぎ取ろうとした。


「なに」


「着替えて頂こうかと思いまして」


()! というか自分で着替えられるし!」


服を引っ張って魔女は抵抗する。まさか脱がされそうになるとは思わず、魔女はより警戒の視線を偽王国の騎士に向けた。


「……そうでした。今の貴女にとって私は()()でしたね」


残念そうにやや声を落とし、偽王国の騎士は呟く。それから懐から数枚の札を取り出した。それを放ると人の形になる。


「なに、それ」


「式神です。要は私の手下で御座います」


顔を布か札らしきもので覆われた人型のそれは、呪猫の使用人のような格好をしていた。この偽王国の騎士は呪猫かそこに関連する場所の出身なのだろうか。


「其処な小娘の世話をしなさい。丁重に扱うのですよ」


「刻印は外しておきましたからね。縛られるのは苦手でしょう?」そう言い残し、偽王国の騎士は去る。


 ほっとしたのも束の間、式神に服を剥ぎ取られ別の服を着せられてゆく。この感覚何処かで味わった気がするぞ、と魔女は不思議に思う。それは確か、()()()()()()呪猫へ行った後の話だ。

 その時も式神に服を着せられて世話を焼かれた覚えがある。


 それから()()と食事をした覚えも。


「……だれ、だっけ」


 まただ、と思う。


 その()()のことを想うと、胸が苦しくなって泣きたくなる。


「きらい、だもん」


小さく呟いた言葉は誰に拾われることもなく溶けた。


×


 着せ替えが済むと式神達は魔女を部屋に残し、去ってゆく。一体だけ残ったので、きっとこの式神は見張り役なのだ。


 魔女は現在の服に盗聴や諸々の術式が仕込まれていないか確認をする。どうやら護りの魔術らしきものやおまじないはかかっているものの、有害なものはないらしい。

 それから、手足を軽く動かし、動きやすさを確認する。


 そして、魔女は仕込んでいたナイフを取り出した。


 そっと扉から外の様子を確認すると、見張りの式神がずっと立っている。


「……(確か、式神は札の図面を傷付けると壊れるはず)」


それも()()から教えてもらった知識だ。その時は実践として直接見せてくれた。その時は溶けるように崩れて消えたのだったか。


 気配も魔力の放出も抑え、そっと式神に近付く。


「っ!」


そして隙を見て顔の札を切り裂いた。途端に式神は甲高い音を立てて砕け散る。


「(身体の検査をしないって甘すぎるんじゃないの)」


 わざわざ刻印を外してくれたことも甘い。なんとなく彼らしくないような気がした。思いつつ、お陰で逃げる機会ができたのだから気にしないでおく。

 そのまま魔女は逃げ出した。


×


 建物は迷路のような、複雑な構造をしている。来た道をそのまま進んでも大丈夫だろうか、と不安に思いつつも周囲の気配を探って入ってきた場所へと向かった。


 細長い板張りの廊下は丈夫な作りのようで踏みしめても音は立たない。第一、魔女の体重はかなり軽いので足音も小さい。


「……(おかしい)」


来た道をそのまま逆走したはずなのに、別の場所に出たような気がするのだ。目の前に、通り道にはなかったはずの橋がある。

 橋は細長い池を跨いでおり、橋の先は離れのような建物が一つだけあった。明らかにこちらではない。


 橋を渡るのはなんだかまずい気がして、魔女は引き返す。


 外は暗くて、建物自体の明かりも少ない。そんな中を魔女は出口を探して走った。


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