新たな出会い
『霊の国』には大きな総合組合の施設があった。
「『地の国』のやつより大きくない?」
不思議そうに薄青い髪の若者が声をあげた。
『地の国』の総合組合が本部のはずなのに、本部よりも建物が大きい印象があったのだ。
「知らないのかい。ここの総合組合は研究機関も兼ねているんだ。色々な施設が合わさっているから、それに応じて施設も大きくなったんだよ」
そう、近くの人に聞いたら答えてくれた。
景観は事前に教えてもらったように、歴史の在りそうな古い建物が所々に見受けられる。ただ、『地の国』とは違い愛玩動物を連れている人は見かけなかった。話によるとこの『霊の国』には妖精が現れるので、妖精にいたずらされないように動物を連れての外出は推奨されていないらしい。
とりあえず、魔女と若者達は総合組合へ行き、到着の手続きをする。
手続きを終えた後、魔女と若者達はクエストや色々の確認をした。
「『樹木の枝葉集め』?」
若者達は首を傾げる。『地の国』では見かけなかった依頼があったからだ。それについて受付嬢に確認してみると
「これは総合組合長直々のクエストなので、報酬が高いんですよ」
そう答えてくれた。
「話によると、『金の国』の王代行である総司令官様も一枚噛んでいるとか」
「その枝葉は何になるんですか?」
「詳しくは知りませんが、同国の『薬術の魔女』様が特別な薬の材料になるのだとか」
「……へぇー」
黒髪の若者の問いに受付嬢の人はすらすらと答えてくれる。
樹木を伐採しにきたとは口が裂けても言えなさそうだ。
魔女は樹木の枝葉集めを依頼にしているのは知っていたので、こういう感じで集めるのか、と感心する。
×
「きみ、小さいからねぇ」
若者達とともに魔女が修練場に入ると、受付で利用不可だと言われた。年齢ではなく身長制限だ。
「わかった」
とは言いつつ、魔女はややぶー垂れる。だがそういわれるだろうな、とは思っていたので早々に諦めた。
「きみ達がけがしても大丈夫なようにお薬作っとくから」
そう、若者達に告げて一旦別れる。薬生成のついでに、薬草採取クエストも一緒にやっておこう、と考えたのだ。
×
魔女と別れた黒髪の若者達が修練場に入ると、そこにはたくさんの冒険者達が居る。
中には『地の国』の樹木がなくなったらしい話をする者もいた。
利用しようとしたらゴツい冒険者に「弱そうだな」と絡まれる。
喧嘩になりそうになった時、背の高い人物に止められた。
総合組合の長だ。
「お久しぶりです」
「ああ、また会ったね」
そして若者達は総合組合の長から武術を教えてもらうことになる。
実際のところ、総合組合の長こと魔女の次男は彼らの実力を確認するために来たのだ。
これから、彼らと戦わねばならないから。
手合わせをしてみると思いの外やるが、自身が本気で掛かるレベルではないと魔女の次男は思う。
ひとまず時間が許す限りは相手をしてやる事にした。手数などのレパートリーを確認するためだ。
ついでに魔術使いの若者には魔術の扱いの手解きをし、聖職者の若者には術を使う望ましいタイミングについて教えた。彼らのこれからのためにも必要だろうと踏んだ。
コツを教えてから上達が思いの外早い。それでなんとなく察する。
このままではあっという間に追い付かれてしまうと。
×
「教えてもらったの? よかったね」
へぇ、と魔女は頷く。次男は軍人だし、ただの冒険者である若者達よりも色々な戦術を知っているはずだ。そんな彼に教えてもらったのなら、もしかすると飛躍的に戦闘能力が高まるかもしれないと魔女は思った。
それから若者達は修練場に通うようになる。話によると何やらライバルみたいないい競争相手が見つかったらしい。
その者が、白い髪の若者だった。
どうやら黒い恰好が偽王国の服装に似ていたために誤解されていたらしい。
「魔人の子らしいんだけど」
黒髪の若者はライバルらしき競争相手のこのことを教えてくれる。それと、また別の人に戦闘について教えてもらっていることも教えてくれた。
「何かね、すごく背の高い綺麗な男の人なんだよ。黒っぽい紫の髪に緑色の目をした人。なんとなく性格は悪そうだったけど、けっこう丁寧に教えてくれるんだ」
競争相手の連れの人らしい。
「へぇ」と返事をしてみるが、魔女は修練所には行けないのでその人を見ることはできなさそうだ。




