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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:基礎

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基礎伐採10


「長かったー」


 客車から降り、黒髪の若者は伸びをした。


「客車は普通の馬車よりは快適だったけど、外の環境が最悪だったわね」


「でも、夜空は綺麗でした」


後から続く魔術使いの若者の、薄青い髪が風でふわりと流れる。聖職者の若者の黄色い髪が日光に煌めいた。季節はすっかり春だ。南側にある国なので、初夏のように少し暑い。


 忘れ物の確認をしたのち、魔女は最後に客車を降りる。子供サイズの魔女にとっては客車の昇降口の段差が大きいので、隊商長に手伝ってもらった。翼のような腕の、ぎりぎり手のような形になっている箇所を掴ませてもらった。ふわふわの羽の感触で、魔女は少し目を輝かせる。


「ふわふわ!」


「ん、そうですかね。こんなご時世じゃないですか。あんまり手入れできていないんですよね」


旦那(あいつ)が見たら卒倒する荒れ具合ですよ、と隊商長は溜息を吐いた。それを聞き、隊商長の伴侶である同僚のことを魔女は思い出す。


「元気かな?」

「私と離れ離れですからね。絶好調とは言えないんじゃないですか」


首を傾げると呆れ交じりに返された。それもそうか、と思い直す。


「んー、やっと解放された。自由っていいね」


「そうですかね。でもまあ、よく我慢してくださいました」


「うん。一か月だったらさすがに嫌だけど、このくらいなら大丈夫」


 客車は窮屈だった。けど、軍の合宿やキャンプよりはまだマシか、とも思う。軍での合宿やキャンプは暑い砂漠や極寒の雪山、色々な極限状態に追い込まれたからだ。だが魔女は軍医なのでこれでも優しくしてもらった方である。


「またのご利用をお待ちしてますよ」


「またね!」


魔女は隊商長に手を振る。隊商の人達は旅人が入国する場所とは別の入り口で、検疫を兼ねて入国審査などを行うのだ。

 隊商と別れ、魔女と若者達は門前にできた受付の列に並ぶ。


「ギルドに着いたら、鍛錬の場所に行こうね」


 黒髪の若者が他の若者達に告げていた。客車で聞いた話を早速利用したいらしい。

 魔女も、自身の能力の把握のためにも一緒に行ってみようかな、と思案する。年齢制限がないといいけど、とも思った。

 別に引っかかりそうな年齢では無いのだが、見た目がどうしても10代前半なのだ。

 説明がめんどくさいので、ダメだと言われたら大人しく引き下がろうと思考する。


 しばらく並んでいると、『霊の国』が偽王国の影響を受けているらしい、と噂話が聞こえてきた。


「……偽王国?」


話している人の声に耳をそばだてると、最近偽王国の者が姿を見せているらしい。

 黒髪の若者が問いかけ、戸惑いながらも噂を口にしていた人は答えてくれる。


 話によると、背の高い偽王国の格好をした者が居るそうだ。


 珍しい白髪の男らしく、特徴を聞くと偽王国の騎士に近い気がする。「気を付けなきゃだね」と、若者達と魔女は警戒を強めた。


×


 ゆっくりと受付の列は進んでゆく。


「お嬢ちゃん、荒野を渡って来たのかい? 大変だったろう」


 受付まで来た時、受付係のおじさんに声を掛けられた。

 『お嬢ちゃん』とか、隊商の人達のお陰で思いのほか大変ではなかったとか言いたかったことは色々あったが、


「うん」


そう頷いておいた。そして許可証のカードを差し出す。カードに登録してある魔力と当人の魔力を照合すればいいものなので、年齢や名前の確認は行われない。


 年齢や名前の確認を敢えて行うときは魔力が合致しなかった時だけだ。それを簡易的に裁きに掛け、父なる天の白き神によって嘘か本当か判別される。

 ――因みに魔女は自身の成人名を忘れているうえに名乗っているのが幼名、且つ見た目が成人前の姿なので父なる天の白き神の裁きには引っかからない。厄介である。


手続きが終わり解放される魔女と若者達。不法入国防止に手続きが終わるまで少し待つらしい。

 しばらくして、手続きの列が一旦止められる。


 それから、門が開く。


 そうして、魔女と黒髪の若者達は『霊の国』の門をくぐった。


※描写してませんが荒野を渡る旅には1週間ほど日数が過ぎています。

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