表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:基礎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

422/600

基礎伐採3


 『亜人化を元に戻す薬』について思いを深めたのは良いものの、薬をどうやって使用するのか深く考えていなかった。現状では液体の薬(とは言いつつ実質ただ煮詰めたもの)だ。このまま水薬にするには味が微妙だしどう効果が発現するかも分らない。


「(直接かけると明らかに効果があるんだよね……)」


 やはり患部に直接届けるような形状が良いだろうか、と思案する。


 ふと顔を上げると、刺座草の茎にストローを刺して中から水分を採取している隊員達が視界に入った。瓶には特殊な魔術がかけられており、見た目以上に容量があるようだ。そして水分の採取を終えると、その傷口に回復の軟膏を塗り始める。


「ああやって刺座草の傷口を塞がないと、植物が枯れますからね。大事な資源なんです」


そう隊商長は教えてくれた。


「(やっぱり、軟膏の形が一般的だよね)」


 経口摂取よりも外部から投与する方が一般的(※この世界基準)なので、やはり直接塗れる軟膏にするのが良いだろうと魔女は思考する。実際、亜人化した人達の変化は内臓には現れず、皮膚や骨格など外見上の変化だけに留まっている事が多かった。だが魔女の次男である殲滅部隊隊長は、目にも変化が起きていたのである程度は目薬の形も必要かもしれない。


 刺座草の傷口の様子を確認していたらしい隊員が刺座草から離れる。きっと十分なくらいに傷が塞がったのだ。


 直接患部に与えるのなら、塗り薬の形が一番楽だ。それに、水薬と違って味について考慮しなくても済む。

 大体の塗り薬は魔力と反応して周囲に効果が拡がるように工夫がされていた。魔女の生成予定の薬もそうなるだろう。


「(……一応で簡単に摂取できる水薬も作ろうかな)」


 水薬は味や消化器官、食事との相性を考えないといけないが、最も低い費用で生成できた。なので、ひとまずの形状は軟膏、目薬と水薬にしておく。

 あとは生成した薬を人体に使用しても問題がないか確認をしなければならない。前臨床として代謝の早い小さな動物と人に構造がよく似た猿を利用する。

 それから対人で臨床試験を行い、そこで問題がなければようやく薬が市場に出回るはずだ。


 実際、薬を作ったとてそれが一般の人々に出回るまで十年はかかる。だが今回魔女が作る薬は緊急のものだ。十年も待つ暇がない。()()()()()()()()

 天地の神に正しい薬の形を教えてもらうのだ。


 薬を実際に生成しそれを天地の神に見せて、それから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そうすると奇跡の力が作用して二年以内で市場に出せる薬が生成できるのだった。


 天地の神は動植物の発展を推奨する神なため、命を短くするような作用を良しとしない。だから、ある程度の信用はできる。そして、仮に何かしらの悪い副作用が発現したとしても、魔女の生成した健康薬(平均的な体調に戻す薬)や回復薬(欠損や異常を修復する薬)があるので大きな問題にはならない。


 前臨床には鼠型の小さな魔獣や猿型の魔獣を利用するが、臨床試験には亜人化してしまった人達の協力が必須となる。

 求人を出して人は集まるだろうか。


「(それにデータが少ないし、そのデータを取るのは今は難しいんだよね……)」


 亜人の人権について、いつのまにか発足していた愛護団体がきっと黙っていないだろう。

 ちょっとめんどくさいな、と魔女は悩む。


 と。


「……?」


 ざわ、と何か妙な気配を魔女は感じる。悪意の強い、悪い気配だ。


 それからすぐ、客車が急停車する。鳥の騒ぐ鳴き声が聞こえ、前方を見ると御者が鳥を宥めようとしていた。


「何かありましたか」


隊商長が叫ぶと


「『偽王国』だ!」


返す誰かの声が聞こえる。


 客車の隙間から、荒野に立つ黒ずくめの人の姿が見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ